04
「雅兄、燈の部屋まだ空いてる?」
布団を掛けられながら寝ている燈を見ながら光が言う。
「空いているというか閉まっているというか…、燈が据付以外のロックをしてるから開けられないんだよね」
マンションの合鍵は全て管理されているので開けることができるようになっている。
しかし、それを知っていた燈は、元からついている鍵の他にナンバーロックを掛けていた。
それにより誰も開ける事が出来ずに、部屋の中は燈が家を出た時のままとなっている。
「あー、あれか。了解」
「どうするの?」
「部屋まで運ぶよ。寝てる間に椿とかが帰ってきたらうるさくて嫌だろうしね」
ロックナンバーには心当たりがあるようだ。
燈は椿のような騒がしいタイプは好きではない。
寝起きとなれば尚更だ。
その事を光はよく知っていた。
なんだかんだ言ってお兄ちゃんしている光である。
「じゃあ光に頼んだよ」
「分かったよっ、と」
光は燈を抱えると、そのまま部屋を出ていった。
「昔からひーちゃんはりーちゃんの事になると過保護だねぇ」
「そうだねぇ」
和んでいる兄達だが、弥の世話をする雅臣が一番の過保護である。
本人に自覚があるかは分からないが。
「右京、今日は燈の帰国祝いって事で夕食お願いできる?」
「いいですが…、それまでに起きますか?」
「うーん、さすがに起きるんじゃないかな?」
「…いいでしょう。腕によりをかけて作ります。まかせて下さい」
右京も、光と燈を警戒しながらも、燈が帰ってきた事は喜んでいるようだ。
この双子の事となると異常に警戒心を示す右京だが、2人が彼にしてきた事を考えれば無理もない。
いつも主犯は光だが、燈が右京に口で負けた事はないくらい厄介な妹だった。
この歳になっても未だ、喧嘩もどきを繰り返しているが、大切な兄弟であることは確かだった。
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