「誰かと思ったら、こんな所で何やってるのよ?」
顔を上げる。
「お姉ちゃん!」
「光兄さん…?」
「燈、またその呼び方?」
「ごめん…。」
心の中では光兄なんだけど、本物を見るとどうしてもお姉ちゃんって呼んでしまう。
光兄の格好が悪いんじゃないかな?
「夜に2人で何やってるの?」
「…。」
「…なんかあったわね。」
「…うん。」
さすが光兄というか。
「ところで、どこに向かってたの?」
「…。」
分からないので、お兄ちゃんの方を見る。
お兄ちゃんも同じことを考えてたようで、目がバッチリ合った。
「…分からない。」
「もう寒くなってくるから、早く帰りなさいよ?」
「…帰らないよ。」
「え?」
「あのマンションには、帰らない。」
「なら今晩はどうするつもりなの?」
「…どうしよう?」
「はぁーー。」
光兄にため息をつかれる。
ため息つくと幸せ逃げるって光兄が言ってたのに。
「まったく、手のかかる兄弟ね。アタシのマンションにくる?」
「え、」
「いいの…?」
「放っとく訳にもいかないでしょ。」
「ありがとう!」
「でも、」
光兄の目が、私の目を射抜くように見る。
「何があったのか、話してくれる?」
「…うん。」
「なら行くよ。」
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