06



――トントン

ドアのノックの音に、急いで、こぼれそうになっていた涙を拭う。


「燈お姉ちゃん!」


わーくんか…。
みんなに私を呼びに行かされたのかな。


「っ、どうしたの?」


ドアを開けた途端、猛烈なタックルをかましてきたわーくん。


「あのねっ、僕は、お姉ちゃんの事信じるよっ!だってね、お姉ちゃんが絵麻お姉ちゃんの事傷つけるはずないんだもんっ…!」


そっと顔を覗き込むと、必死に泣くのを我慢してる顔だった。
そういえば、いつもわーくんと一緒にいる、雅兄がいない。
多分、ドアの外にも。
嫌な予感を感じながらも、わーくんに尋ねる。


「雅兄は、どうしたの?」
「まーくんにね、お姉ちゃんは悪くないんだよって教えてあげたら、ね…、怒鳴られたの…」


言いながら、泣き出してしまった。
そりゃそうだ。
多分初めて怒鳴られたんじゃないかな。
雅兄が怒鳴る所とか、見たことないから。
それが、私にも突き刺さるのだけど。


「お姉ちゃんは悪くないよね?」


不安そうに見上げてくるわーくんを抱きしめる。


「ありがとう。」


そう言ってから、話し始める。


「わーくんが私の事信じてくれるんだったらね、兄弟みんなが仲良くして欲しいんだ。だから、わーくんも、雅兄に、僕のこと好き?って、僕はまーくんの事好きだよって言ってあげて?」


とにかく、わーくんと兄弟の間に溝を作ることだけは避けたい。
小学生に、重荷を背負わせちゃいけない。


「…分かった。」
「わーくんはいい子だね。」


頭を撫でながら部屋の外に出す。
わーくんが信じてくれていた事はすごく嬉しかった。
だけど、ほかの兄弟に裏切られたショックの方が大きくて…。
一人になった途端、またさっき言われた言葉が胸に突き刺さる。


「私なんて、血も繋がってないしね…。」


つーちゃんの言葉を思い出して呟いた。

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