余波の余白

父は外食が嫌いだった。
興味がないと言うよりは保守的で家が好きな人だった。
同級生の父親より無口な方で、
新聞ばかり読んでいる思い出しかなかった。
他の子は御子様ランチに旗がついていて、
それをよく自慢してきた。
私はそんなのは欲しくなかったけど、
父は頑として外食には連れて行ってくれなかった。


シュート・マクマホンと出会った時、
父に似ていると思った。
見た目ではなく、頑さや無愛想な雰囲気が
そっくりだったのだ。

口数少なく意思を伝えてくることは日常茶飯事。
内向的で、自分の世界を大切にするところなど
シュートと顔なじみになってくるとますます
父に似ていると思うようになった。

行動パターンがそうやって読めてくるせいか、
彼の欲している動きや言葉が自然とわかった。
モラウさんはそんな私を見てか知らないが、
ナックルが単体で動いているときは必ず
シュートと私をタッグで行動させた。

シュートは、父と同じでとにかくマメであった。
ちょっとしたことで連絡をくれたり、些細な相談ものってくれた。
嬉しかったが、私にとっては頭の片隅で父が囁いてくる様だった。
牛乳飲んで、喉の中に膜が張られたみたいな感覚。
私は、家族の中で私だけが父と同じ瞳の色をしていたのが嫌だった。
だから気がつけばシュートに対してもあと一歩、引いた感覚でいた。
あなたのこと、気になっているのに。


「・・なまえ」

今日、仕事の打ち合わせが終わってから
シュートが話しかけてきた。
大きくてまるっこい目とかち合う。
無意識ではあるが今、きっと困った顔して
私は笑っている。


「どうしたの、シュート。」

「ああ・・。」

ただ大きな瞳がこちらを見つめる。
私は体を向き直って言葉を待った。
向き直ったのはよかったが、その威圧感に圧倒されて
肩は内側に寄せられた。
いつもよりも少しだけ険しい顔をしているシュートに不安を覚えた。
それでもシュートは少し口ごもりながら話した。

「この後、時間はあるか・・。」

「うん。まだ夕方だし・・。」

「どこか、食べに行かないか。」

「えっ・・ご飯・・?」

シュートは少し顔を背けた。
そこに父の影はなかった。

「あ、ああ・・。なまえとは仕事以外で接点がないだろう・・。
だけど、きっとなまえと一緒に行ったら、楽しいと思うんだ。」

「私と、行くのが・・?」

「・・・なにか、おかしいこと、言ったか・・?」

「違うの、違う。そうじゃなくって」

手が勝手に胸の前まであがった。

「・・・・ほんとうか、嫌なら言ってくれ。」

「嫌じゃない・・!
あのね、私、多分シュートのことが好きで、
すごく緊張しちゃうと思うんだ。
・・それでも一緒に行ってくれるかな。」


そこまで言うとシュートは見た事がないくらい顔が強ばって
同時に声を絞り出すように発するようになった。

「お、俺のことが・・?」

「そう、私、シュートのこと好き。」

そこまで言ったら少し涙がでちゃったので
私は思い切り笑った。

シュートと私は違う色した瞳で
同じような困った顔して笑いあった。

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