あめふらし




今日は生憎の雨。
しかも今日は休日で、彼とのデートの予定が入っていたのだ。
昨日から止みそうにない量の雨が降っていたと思ったら、やはり止まなかった。
今朝のニュースでも、梅雨入りがどうとか言っていたっけ。

そんなこんなで今日のデートは急遽お家デートに変更。
彼の家にお邪魔させて貰うことにした。


「雨、止まないですね….」


窓際に設置されたソファーで膝立ちになり、窓から外を覗く。
視界不良で見通しは悪く、少し離れた所は見えなくなっている。
道の端には大量の雨水が流れ、小さな川を作り出していた。


「僕、雨ってきらーい」


彼………江戸川乱歩さんは、私の隣に座って窓を見た。
詰まらなそうに頬杖をついて、私と同じ場所を見詰める。


「外に出ると濡れるし、じめじめするし」


裸足の足を、子供のようにばたつかせる彼。
何か楽しいことして、と言う催促だろうか。


「あーあ、早く止まないかなぁ。

仕事行くのめんどくさくなっちゃう」


彼は雨を見る事に飽きたようで、ごろりとソファーに寝転がった。
えい、と足で私の事をつついてきた。


「私は雨、わりと好きですよ」


ソファーに腰を下ろして、乱歩さんの足をやんわりと退ける。


「えぇっ、ほんとに?
こんなじめじめでうざったいのに、好きなの?」


彼は私の膝の上で足をばたつかせた。
どうしてだ、続きを聞かせろ、と、まるで子供のような目が訴える。
私は彼の足を制止させながら、雨の音に耳をすませた。


「だって、2人でゆっくり出来るじゃないですか」


彼はお家デートよりも、何処かで遊ぶ方が好きだ。
なのでこんなに2人でゆっくりしたことはあまりなかったのである。

彼は私の膝から足を退けると、寝た状態のまま膝を抱える。
体育座り、と言うやつだ。
自らの膝で顔を隠して、彼はぽつりと呟いた。


「何でそう可愛いこと言ってくれちゃうかなぁ、」










あめふらし










(ちょこっとだけ、雨嫌いじゃなくなったかも)

(本当ですか?それはよかった)

(ほんのちょこっとだけ!)


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