勢いってないわ


「そろそろ帰るか」

俺が切り出せば、清河はパッと顔を上げ、「そうですね」と笑顔を繕った。なにかを考え込んでるみたいだが、本人はそんな顔してることに気付いていないのか、話してくれる気はないようだ。
…………金田一や国見になら、話すんだろうな。

「清河」
「はい?」
「上手いこと言えないけど、あんま悩むなよ。俺で良かったら力になるからな」

ほらな、結局、こんな薄っぺらい言葉しか出せねぇ。
本当は、俺だけに頼って欲しいと、こっちを見て欲しいと望んでいるのに。

「ありがとうございます」

そう笑った清河はどこか切なそうに笑って、それでも嬉しそうだった。それをなんとなく放っておけなくて、ついいつものように頭をわしわしと撫でてしまう。するといつもみたいにぱあっとした笑顔になった。あーもうかわいい。この表情が一番好きだ。

「ケーキ、美味しかったです!また食べにいきましょうね!次は奢らせませんよ!!」
「おう、また今度な」

ケーキを嬉しそうに食べ、口元に食べかすを付け、それを舐めとる清河はそれはすげぇ破壊力だった。俺なんかと違って小さい口から覗く舌が、食べかすをつけてるという可愛らしさと正反対のいやらしさを放っていて、思わず固まっちまった。自分でもよく我慢できたと思う。
そういえば様子がおかしくなったのはそれくらいからだ。及川になにか言われたのかと思ったが、そこも教えてはくれなかった。

「では、ここで失礼しますね!」

ハッとして清河を見る。ここで、このまま帰していいのだろうか。悩んでるだろうになにもしてあげられない男なんかを、こいつは意識してくれるのだろうか。

気付けばその細い手を掴んでいた。

「…………清河!」
「は、はい?」
「さっき俺、お前の力になりたいって言っただろ」
「はい……」
「嘘なんかじゃねぇからな。俺は、お前を特別に見ている上で、助けたいと思ってる」

あーちくしょう、こんなこと言ったら。

「そんで、あわよくば俺を意識してほしいとも思ってるからな!!」


好きだって言ってるようなもんじゃねぇか。


「…………えっ?」
「あっ、えっと、だから」

勢いで言っちまったがこりゃどうすればいいんだ。やばい。やっちまった。

「だ、だからその、悩んでるならちゃんと話せよ!じゃあな!もう遅くなっちまうし気を付けて帰れよ!!」
「えっ?あっ?は、はい!!気を付けて帰ります!!!さようなら!!!」

俺が慌てて帰りを催促すると清河も慌てながら挨拶をしてぱたぱたと走って帰って行った。
ふぅ、と一息つく。




……………………今のはねぇだろ俺!!!!!!!!



不服だが、帰ったら及川に相談するしかねぇか。




- 24 -


[*前] | [次#]
main

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -