和解?



汗を滴らせる部員にタオルを配っていく。多いからもう来た順番だ。
「及川さんどうぞ」
「はーいありがとっ」

「勇くん、あきちゃん、はいタオルー」
「さんきゅー」
「ありがと」

そしてもちろんこの人にも渡さなくてはならない。

「……花巻さん、タオルどうぞ」
「ありがとー瑠璃」
「なんでタオル渡すだけでいちいち肩を抱いてくるんですかね!」

手ぇあっつ!!ボール打って動きまくってたんだからそりゃそうだろうけどあっつ!!ジャージ越しでもわかるわ!
肩くらいじゃ拒絶反応は出ないが前回のこともある。しっかり言わねば。

「あの、花巻さん」
「なぁに?」
「私実は昔強姦されかけたことがありまして。トラウマになってるのであんまりその……触れられたくないところが多いんです」

思い切って出してみたら花巻さんはバッと手を離したあと固まった。慌てたのは勇くんとあきちゃんだった。
「バカ瑠璃!」
「お前ここみんないるんだぞ!?」

あ、ほんとだ。まぁそこはもう気にしない。どうせどこかでバレることだろうし。
しかし今は固まったままの花巻さんだ。

「花巻さん?」
「っゴメン!!」
「!?」

声をかけるとビクリと動き、がばりと大きな体を90度に折って謝ってきた。
「絶対嫌だったデショ?ゴメン……からかい半分で触ったりして……」

あ、はい、いいから頭上げてください罪悪感半端ないです。

「花巻さん、気にしてないので!気にしてないので!頭を上げてください!!トラウマなのは本当ですけどそれで花巻さんをどうこうとかじゃないですし!!」
肩をグイグイ押し頭を上げさせると眉を垂らした、言っちゃ悪いがみっともない花巻さんが居た。それを見て思わず笑ってしまう。

「ちょっ、なに笑ってんの?怒るとこだよね?」
「いや、花巻さん今すごくかわいい顔してるなって……ふふっ」
「かわ……!?」

今の私は15歳でも、本当の私からすれば彼も年下なのだ。年下はやはりかわいらしい。

「瑠璃、バカにしてる?」
「違いますよ、いつもはかっこいいなって思ってますけど、今はかわいいなって思ってるだけです」
「………瑠璃はそういうとこ小悪魔なんだネ」
「本音を言って生きたいだけですよ」
小悪魔とか恐れ多い。おばちゃんの視点としては当然なんだよ?おばちゃんからすればおまえらみんなかわいいよ?

「でもほんとゴメン、もう触らないから」
「ありがとうございま……あ」
「?」
「他のとこのかわりに頭なら触ってください」
「……はぁ…」

どういう溜め息だゴルァ。と思ってたらその白くて大きな手がぐしゃぐしゃと覆う勢いで頭を撫でてきた。
やっぱり撫でてもらうの好きかも。ついついにやけてしまう。

「うれしそーな顔しちゃって」
「ふふふ、頭撫でてもらえるの好きみたいです」
「じゃー、これからは目一杯撫でさせてもらうわ」

優しくそう笑ってくれると最後に一撫でして、隅に置いていたドリンクを取りに行った。
うーむ、花巻さんやっぱり綺麗だなぁ。



「はーいみんな集合!」
部員に集合をかけると、今度の練習試合の話が出てきた。

「ちなみに相手は烏野だよ〜」
「烏野?なんでまたそんなところ……」
「ふふふ……」

腹立つ笑い方しますね及川さん。飛雄ちゃん楽しみなんだろうね。あなたこのあと足怪我する予定ですけど大丈夫ですか。
……そういえば、こういうアクシデントを、私は防いで良いのだろうか。及川さんが怪我をしなければ、恐らく最初から及川さんがフルセットで練習試合に出るであろう。そうなると登場の仕方も変わるし烏野からの青城の捉え方も少し変わるんだろうな。
…………難しいこと考えない方がいいか。なるようになる。

「清河、難しい顔してっけど大丈夫か?」
「あ、はじめさんすみません。えーっと、さっき教えて貰ってた練習試合のやることのペース配分とかどうしようかと悩んでました…」
嘘つきましたごめんなさい。

「あんま気にすんな。控えメンバーもいるし慌てなくていいからな」
「…はい!」
うーんかっこいいなぁ!こう言ってもらえると頑張ろうって思えるな!社会人になってからはなかなかこんなこと言われなかったし。……あー嫌なことも思い出したやめよう。今日思い出してばっかりだ。

嫌な思いを払うようにゆるく頭を振るとなにか察したのかはじめさんがぽんぽん、と頭を撫でてくれてなんだかちょっと泣きそうになった。

話が終わったあと花巻さんもなにか察したのか盛大に撫でてきて、それにセコム勇くんあきちゃんが登場して言い合いになり、及川さんと松川さんがそれを煽り、はじめさんがぶちギレたのはコントのような流れだった。こいつら仲いいな。

でも見てたらなんかちょっと元気出たぞ。サポートがんばろー!



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