事情と昼御飯



昼休み。晴れたおかげで屋上は心地よく、爽やかな場である。今からアレな話するんですけどね。
というのも私はもうわりと普通に話せるようにはなっている。どちらかといえばああいう反応になってしまう自分を嫌悪しているのだ。

「じゃあ話すけど、その前にご飯食べるのと話してからご飯食べるのとどっちがいい?」
「気になるからすぐ話せ」
「聞かなきゃ気になってご飯も味わえる気がしねーよ…」
「お前ら即答だな。んーと、手っ取り早く言うと、中学のときに何度か強姦されかけたことがあって」

「「は!?」」
「実の兄からと学校でモテる先輩からとで色々とトラウマ拗らせちゃって」

二人は目を見開いて反応した。突然すぎるカミングアウトでしたかそうですか。
と思ってると勇くんが青い顔をして続けた。
「お前、そんなん、大丈夫だった……わけねーよな…?その、おまえ……」
「あぁ、うん、本番まではされてないから、うん」

今高校生だからいいけど本当の年齢でバージンってヤバイなとめっちゃ本気で焦ってたところはある。しかしトラウマというのはやはりこびりつくもので、男性と恋愛をするのが怖くなった。最終的にはどうしたってそういうことになるんだろうし。

「俺たちは大丈夫なのか……?」
「うん、今までも男友達はいたしそういうやつらに普通に触られる分は大丈夫なんだけど、不意打ちでこう、やたら感触がこびりついてる所とか触られると拒絶反応みたいなのが出ちゃってね」

だから花巻さんが嫌だったってことじゃないよ、と言えば二人は複雑そうな顔をした。

「……あのさ、俺たちは瑠璃を守ろうと思う」
「ほっ?」
勇くんの言葉に間抜けな声が出てしまった。守られるとは。

「そういうこと。別にこの話以前に瑠璃ってなんか擁護欲をくすぐられるというか。大人っぽいくせに末っ子ぽいんだよな、お前」

あんたらより上だよおおおおおおばちゃんだよおおおおおなんだよ擁護欲って!!
頭抱えたいのをぐっと堪えながら、あんまり重くならずに済んだことに嬉しく思う。腫れ物みたいに扱われるのが一番つらいし。

「じゃあ及川さんが苦手なのもそれを思い出すとかなのか?」
「あー近いようでそれとはまた別かな。そのモテる先輩に気に入られてたから女子の反感買っちゃって…」
「あーなるほど……」
答えながら弁当箱を開く。それを合図のように、二人も昼御飯を食べ出した。今日は卵焼きが上手く出来たのである。

「ってか勇くんそのからあげ美味しそう。一個ちょうだい」
「いいけど瑠璃のもなんかくれよ」
「じゃあ卵焼きあげる〜」
「瑠璃俺にもちょうだい」
「あきちゃんなにくれるの?」
「塩キャラメル」

勇くんの弁当箱に入っていたからあげがそれはそれは美味しそうでありがたく頬張る。おいしい。一人暮らしだと揚げ物ってほとんどしないからなぁ。

「……意外と軽く話してくれたんだな」
先ほどの内容のことだろう。勇くんがぼそりとこぼした。

「もう今はなくなってるし、二人とも信頼出来るって思ったから、話してもいいかなって」
「へぇ〜ちゃんと信頼されてんだな、俺たち」
ニヤリと意地悪な表情で確認してきたあきちゃんにちょっと恥ずかしくなるけど、本当のことだからなにも返せず、誤魔化すようにからあげにかぶりついた。


「勇くん家のからあげうまっ」
「そうか?母ちゃんに言っとくわ」
「いいお母様をお持ちだよ…」
しみじみと呟けば、あきちゃんが思い出したように顔を上げる。
「そういや瑠璃一人暮らしか。ってことは弁当も瑠璃の手作り?」
「そうだよー」

自分で作ったものばっかり食べてるから他の人の作ったもの食べること減ったしすごく美味しく感じるんだよね。

「卵焼き美味しかったぞ!?自分であんなん作れんのか!」
すげー、と目を輝かせる勇くんに大袈裟だなぁと笑う。
「そんなことないよ。結構誰でも出来るって!機会があったらうちにごはん食べにおいでよ!一人で食べるのも寂しいし」
そう言えばあきちゃんが頭を撫でてきた。この子意外とスキンシップ取ってくるのね。コミュ障ぽいと思ってたのに違ったのか……。

「今度行かせてもらおうかな」
「おっお待ちしてます…」

にこりと微笑んだあきちゃんがそれはそれは可愛らしくて思わずどもってしまった。


うん、やっぱりごはんはみんなで食べるのが美味しいね。





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