竹谷くんと付き合い初めて二週間が経った。
そこでわかったこと。

簡潔に一言で言うと、彼はとてもいい人である。


彼は私がいつも困ってる時に手を差し延べてくれる(この前重い教材を私の代わりに運んでくれた)、優しい人だ。

「俺は大丈夫だけど、名前は実習の次の日だし…やっぱ日を変えようか?」。

これは今日の逢い引きの約束のことなんだけど。
私のこと気使ってくれてるでしょ?


あんまり男の子に優しくされたことがない私は、竹谷くんのさりげない優しさにどうしていいか、迷ってしまう。


ちょっと前の…私とあの人みたいだ。



「ごめん名前っ待たせたよな!」


『ううん、大丈夫。今来たとこだよ』



竹谷くんは走って私のもとに着くなり、ごめんと手を合わせた。

きっとこの人、優しいから脱走した動物を探してあげてたんじゃないかな。
ほら、裾がちょっと土で汚れてる。



「じゃぁ町まで出掛けるか!」


『うんっ』



それから竹谷くんはとても純粋。

手を繋ごうかどうしようか、顔を紅くしながら悩んでいるさまはとても可愛いと思う。

彼とはまったく正反対だ。
あの人はいつも私の気持ちなんて考えないで、手を繋いだり抱き着いたり…。


ああ、私何考えてるんだろう。
私の隣にいるのは竹谷くん。
竹谷くん、なんだから。



「ほら、あの店!俺がこの前見つけた美味しい甘味処。名前腹減ってるか?」


『うん、ちょっとお腹減ってる』


「じゃぁ先にそこ行こうぜ!」








何で、何で何で。



「名前にはっちゃんじゃん」


「勘右衛門!なっなんでお前いるんだよ!!」


「俺も今日休日だからね、町に来ちゃ悪いのー?」


「べっ別に悪くはないけどさ」


『勘ちゃん…』



彼が居た。

竹谷くんが驚いているんだもの、きっと偶然なんだろうけど。
ちょっと会いたくなかった。
いや、会ってよかったのかな。

私がさっき竹谷くんと被せて考えていた意中の相手は、今目の前にいる彼。
きっと彼と仲がいい竹谷くんだから、付き合いのことは言ってたと思う、けど。

………何考えてんだろ私。



「よーしっ俺一人で寂しかったんだよね!俺も一緒に回っていい、お二人さん?」


「俺は構わないけど…名前、いい?」


『……いいよ』



何でこうなったんだろう。

私の記憶のなかで勘ちゃんは空気を読む人だったはずだ。
逢瀬をしてるぐらい、見てわかったはずなのに。


傍から見て奇妙な図だと思う。







「ちょっと俺、学園にいる動物たちのエサ見に行ってきていいか?名前が楽しめるようなもんじゃないし…勘右衛門」


「うん、了解ーゆっくり行ってきなよ」


『え、竹谷く……』



どうしよう。まさかの展開だ。
私と勘ちゃんが二人きりになるなんて。

私動物のエサ見るの別につまらなくなんてないのに。
遠ざかる竹谷くんの背中を見て私は落胆した。



すっ



『え、な、何…勘ちゃん?』


「んー名前に似合うと思ってさ!うん、やっぱり似合う似合うっ」



背後に回って勘ちゃんは私に何かしたみたい。
しゃらん。
金具がぶつかり合う音が聞こえ、私の頭に重さが加わった。

……これ、簪だ。



『勘ちゃん!!』


「…男が女に簪を贈る意味、名前ならわかるよね?」


『なんっ…なんで…?!』


「あー今日はほんと楽しかった!名前にも簪渡せたしねっ!
ふふっ、俺ってもしかしてお邪魔だったりした?











(勘ちゃん、)
(貴方は何を考えてるの?)



110225

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無駄に長くなってすいません…!