「勘ちゃん、ハチくのたまの子と付き合い始めたんだって」




正直興味がなかった。


同室者で同じ組の久々知兵助は俺にそんな話しをしてきた。
ちなみに今は部屋でまったりしてたんだけどね。

お互いやることがなくて…あ、ごめんごめん兵助は豆腐を食うって義務があったっけね。
じゃぁ俺はやることがなくて畳に寝そべっていました。


そんな中のある会話の一部。




「気にならないの?勘ちゃんは」


『いや、気にならないってわけでもないけど。特別気になるわけでも』




だって俺色恋沙汰とかそんなに興味ないしなー。

まあ仲がいい子はいたけどさ。
その子も可愛い子だったんだけど、やっぱそれまでじゃない?


俺の中でもその子は仲が良くて可愛いくのたまの女の子。

はい、それで終わりなわけ。


って。
あっれー。




『兵助そんな目で見ないでよ』


「意外」


『…何が?』



「勘ちゃんってくのたま達と仲がいいから、てっきり食いついてくるかと…」




俺そんなにプレイボーイに見えてんの?

うわあ、だとしたらちょっとやだな
俺そんなに女の子好きってわけでもないんだけど。


まあ俺のことはこの際いいじゃない




『そうそう、それではっちゃんの彼女ってどういう子なの?』


「勘ちゃんいきなり食いついてきたね」


『まぁ…はっちゃんと友達だしね』




寝そべっていた体勢を変え、俺は兵助の顔を見るべく彼の前に座った。

あ、豆腐。
もう一丁食ったの。




「それが俺も名前わかんなくてさー髪が長くて…あとは黒髪で」


『…そんな特徴のくのたまならいっぱいいるよ兵助』


「んーだって俺その子のこと知らないし」


『じゃぁ今暇なんだし、直接はっちゃんに聞きに行ってみる?』




単なる遊び心。

別にその子が別段気になるわけではない、けど。
どうせ暇だからはっちゃんをからかいに行ってやろう。


そんな気持ちで、俺と兵助ははっちゃんに会いに行くことにした。



そういやろ組実習終わってたんだっけかな…とか思いつつね。








びっくりした。



はっちゃんとその彼女が一緒に実習を組んで帰ってきたところだったみたい。

いやそこに驚いたわけじゃないんだけどね。


何となく気まずい気がして、俺と兵助は物陰からその様子を観察することにした。

兵助が豆腐を食いながら(…あれ、持ってきてたの)俺を気にかけている。




「勘ちゃん、どうしたの?」




ほんと俺もどうしちゃったのか自分でもわかんないんだよね、これが。

目の前の幸せそうなはっちゃんとその彼女を見て、俺は…。





「竹谷くん、今日は本当にありがとう!竹谷くんとペア組めて…嬉しかった」


「何言ってんだよ。俺もお前と組めてよかったぜ!

好きだ、名前」






はっちゃんの彼女は俺がちょっと仲が良くて可愛いと思っていたくのたま、名字名前だった。

目の前の光景に俺ははっちゃんの友人として幸せを願うべきだと思う。
きっと隣の兵助はそう思っているはずだ。



でも祝福の言葉が出て来ない。



何故出て来ない?




その理由を考えたら俺はある結論にたどり着いた。

今の今まで気付かなかった。
俺は色恋沙汰なんて興味がなかった



彼女のことも可愛いくのたまの「友達」だった。





でも彼女が「友達の彼女」になって俺はすごく彼女のことが欲しくなった。

すごく、《はっちゃんの彼女》が魅力的に見えた。




「ねえ、勘ちゃんどうしたの…?」







「いや何でもない。ただね、













(なーんて、ね)



110105

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勘ちゃんは黒でも白でもうまいです