豆腐のようなきめ細やかな白肌に知的さを表す黒ぶち眼鏡。
いつも手入れの入っている艶のある髪。
そして整った愛らしいお顔。
名前先輩は中身もお優しく素敵な先輩ですが、眉目秀麗でもある貴方を俺は一等愛して



『います、と』


「あーーごめーーんうっかり手が滑ったあ」



べしゃっ



『かっ勘ちゃああああああん!!』



せっ、せっかく愛しの名前先輩宛てに恋文を書いてたのに…!
俺は時間をかけて何枚も何枚も綺麗に清書していた。
うまくこの気持ちを伝えることができなくて、
やっとの思いで短く綺麗に書けたっていうのにっ勘ちゃんてば!!

後ろからその書き終えた恋文に墨を垂らしてきた。
なあ、これわざと?
勘ちゃんわざとなの?



『勘ちゃんっ!これで何回やってると思ってんだよ…3回だ3回!わざとなのか?』


「んーん、全部偶然偶然。俺が故意にこんなひどいこと兵助にするわけないでしょ、ふふっ」



顔が笑ってない。

実は俺が名前先輩に恋文を送るのは初めてではない(まぁ過去の恋文に返事はくれなかったんだけど…名前先輩は恥ずかしがり屋さんだからな//)。


だからこうして俺が恋文を書いている風景は勘ちゃんはよく知っていた。
その時はこんな…悪行はしなかったはずなのに。
たぶんこの文を送る相手が名前先輩だとわかるようになったからだ。

……名前先輩は俺だけの先輩だと思っていたのに。

謎に包まれていた学級委員長委員会委員長だったとして、最近知名度が上がりつつある。
その度にいろんな人を虜にしてしまう名前先輩は…やっぱり罪なお方だ。


だって勘ちゃんも今は名前先輩のこと、好きなんだろ?
いやたぶん三郎もきっとそう、いや絶対そう。
あのめんどくさがりな三郎が自分から委員会活動をするくらいだし。



「にしても、やっぱり兵助は恋文にも豆腐絡みでいくんだね」


『当たり前だろ。名前先輩は俺にとって豆腐のような存在だからな、いや豆腐より好き』


「…、なるほど」



例え勘ちゃんでも先輩だけは譲らないからな。
これだけは絶対に。

俺と名前先輩が会ったのは四年前、まだ俺が一年のとき。
家族と離れ離れで毎日が寂しかった俺は夜隠れて泣いていた。
ほんとは勘ちゃん。
お前に相談しようかと思ってたんだけど、理由が理由なだけに恥ずかしくて言えなかったんだよね。






『…母様っふぇ、っく…うぅ』


「うるさい。誰だそこで泣いているのは」


『ご、ごめんなさ…!』


「………。お前一年だろ。早く寝ろ、明日の授業に響く」


『は、い……ぐすっ。』


「…そんなに家族が恋しいか」


『え』


「母の名を口にしてただろ。まだお前にはきついかもしれないが…ここは悪いとこじゃない。お前には頼れる仲間が居るだろ、今はそいつらに温もりを求めてみろ。………きっと答えてくれる。じゃぁな」


『あ、まっ待ってください!……俺、一年い組久々知兵助って……いいます。あなたは?』


「………二年い組名字名前」






一目惚れだった。
帰り際に月明かりで名前先輩の顔を見た瞬間に一瞬で魅せられた。

それから今まで想いが膨らみに膨らんで、あぁ、最近では危ない妄想までしてしまう(先輩に豆腐ぶっかけたい…)。



「知らなかった!そんな早くから名前先輩のこと知ってたの兵助ー。教えてくれてもよかったのにー」


『だって名前先輩は俺のだからな』


「ヤダヤダー名前先輩は俺のっ」



駄々をこねた勘ちゃんが俺にアタックをかましてきた(ちょ、痛い…!)。
って…あ!!
ま、また恋文汚しちゃったじゃないかー!

勘ちゃんのばかっ!



『名前先輩はあげないからな!』


「何言ってんのー兵助。委員会で縦の繋がりのある俺と鉢屋が有利だよ?俺も譲る気ないからねっ」



ほんとは同室で親友の勘ちゃんとは張り合いたくないんだけどね。
名前先輩がかかると話は別だ。

勘ちゃんにも三郎にも…いや他の先輩や後輩にも、名前先輩は絶対渡さないからな!








110304

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兵助がヤンデレになりそうでヒヤヒヤしてます