「懐に入ってくるものは触っても簡単に壊れませんよ。俺たちも、そんな柔じゃないんすから」



そう竹谷ハ左ヱ門こと、生物大好きヤキソバ委員長に言われて。
私は少し変われただろうか。
先の一件で一年生たちに謝ることができたわけだけど(まさか鉢屋三郎に謀られるとは…あの後すぐに気付いた)。

私にこんな力が無ければ悩む必要なんてないだろうに。

この私の部屋からは中庭がよく見える。
今は昼休み。
今日六年い組は午後から授業が無く、かといって自主練するほど気力の無い私は、こうして縁側で様子を見ていた。

忍たまが4、5人集まっている。
たぶん七松小平太がいるから体育委員会だろう。
あ、二年生がこけた。



「七松先輩!ちょ、少しは加減をしてください!」


「も、もう無理…無理ですっ」


「四郎兵衛せんぱ、だ、大丈夫で…すかっ…?」


「へばるのが早過ぎるぞ、金吾に四郎兵衛え!……ん、滝夜叉丸っ三之助は?」


「え、さっきまでそこに……いっいないいいい!どこ行ったんだあいつ!!」


「まあいいや続けるぞー!いけどんアターーック!」


「「「ぎゃあああああ!」」」



毎度毎度あそこの委員会は騒がしい。
主に委員長が。
七松小平太は強靭的な体力の持ち主だと思う。
………でもそれはあくまで二番目だけども。
まだあのくらいなら下級生と戯れられるんだろう。

きっとあの暴君を止められるのは私ぐらいではないか。




誰かがこちらに走って来る。

前髪と後ろ髪が違う色(珍しいな…)で薄緑色の装束(三年か)。
少し頬や手が砂で汚れている。

もしかしてさっきいないって騒がれてた三之助、か?


「あの…っ」


『何か用か?』


「っ!!///」



ボフンッ。


そんな効果音が出てきそうなくらい、目の前の三年生は顔を真っ紅にさせた。
お、おい…熱あるんじゃないだろうな?

私との距離を徐々に詰め、目の前に来た彼。



「先輩……なっ何てお名前ですか?」


『…名字名前だ。お前は?』


「名字…先輩/// 俺は次屋三之助って言います!ああああの、も、もしよかったら一緒にバレーやりません、か!」



やっぱりお前だったのか、迷子。

正直バレーはやりたくないんだが(私がバレーボールを触ると力の加減ができずに破裂させてしまう)。
でも体育委員会のやつらは次屋三之助を探していたようだ。

連れていくべきなんだろ。


それに…下から視線が熱い、気がする。



『私はバレーはしないが、お前を七松小平太に届けるべきだと思う。だから行くぞ』


「はっはい!」








さっきから、こいつ。



『どこ行くんだ次屋三之助…!』


「え、いやぁ…こっちに委員長たちが居る気がして」


『そっちは長屋に戻る。こっちだ、早くしないと昼休みなくなるぞ』


「じゃ、じゃぁ…///」



ぎゅっ



『っ?!』



私の手にまだまだ未発達の小さな手が添えられた。
手を繋げってことなのか…?

無茶を言うな。

人に触られるだけでも、それでも私は苦手なんだ。
自分がこの手を握ってしまったら、きっと潰してしまう。
私はこの手を握れない。



『困る…私は握り返せない』


「お、俺が勝手に握ってますから!………それじゃダメですか?」


『うっ』



どうも私は下級生のこの目に弱いらしい。
そ、そんな目で私を見ないでくれ…。

結局私と次屋三之助は手を繋いで(と言うのか?)暴君の前にたどり着いた。
そしてカーンカーンカーン、昼休みの終わりの鐘が鳴る。



「あああああー!!三之助に名前!なっ何でお前たち手を繋いでるんだ!」


『七松小平太騒ぐな。私だって好きで繋いでるわけではな』


「ずるいずるいー!私とも手を繋ごう!」


『な、!!はっ早く授業行け!今に始業の鐘が鳴るぞ』



やはり私にはまだまだ自分に怯えてる部分があるようだ。
柔じゃないとわかっていても。また同じ過ちを繰り返してしまったら。

そう考えただけで身体が動かなくなるー。








110304

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ビビりな主人公ですね