『ハ…ハチっ』


「おおおお! しゃ、しゃべった! 雷蔵の言った通り、やっぱ天才なんだな!!」




この前の実習で思いがけなく出会った、半妖怪のこの子。

俺も半ばそんな存在がいるのかと疑っていたが目前に居るから肯定しざるをえない。
頭の上に大きな猫耳、尻には尻尾。

それに今なんかくりくりした目で上目遣いだぞ。


たぶん俺じゃなかったら理性が持たないと思う(俺すげえ)。



もともと実習は最近噂になってた密貿易の不正商人の取り締まり。

そこに捕まっていたこの子を救出して、手当てした。
野生に返すことも考えたが、また捕まることが見えてたので



こうして俺が責任を持って“飼ってる”ってわけだ。




「ハチ、ハチハチ…!」




半妖怪は半分は人間だから、俺達と同じで言葉を覚えさせればしゃべるらしい(雷蔵によると)。

なので今言葉を教えている。



俺の名前を何度も復唱する様はもう、ほんと、可愛い。

頭撫でてやろ。


よしよし。




「みぅ」


『よし、今度は雷蔵だ! ら、い、ぞ、う』


「らい、ぞ…?」


『よしよしっその調子であと3人覚えような!』



あと3人の名前覚えさせて驚かしてやろ。

ふわふわした茶色の髪(ここは雷蔵と三郎に似てるな)をくしゃくしゃと撫でてやる。
すると気持ちよさそうに目を細めるこの子。



やっぱり猫なんだなー。







「あっ居た居たー。 二人とも真剣な顔して、何してるの?」


「俺にも撫でさせて!」




勘ちゃんと兵助が現れた。


実習お疲れ様ー(あ、俺はこの時間授業なしだぞ。 サボったわけじゃないからな!)。

二人ともこちらに来て、勘ちゃんはこの子の頭を撫で始めた。
兵助は…お前また豆腐かよ!



よし、言ってやれ!




「とーふっ、う、どん!」




びしり、

べちゃ、





空気が固まった。

兵助の大事な大事な豆腐も落ちた。


おい、兵助お前の大事な豆腐落ちたぞ。
おい、勘ちゃん髪の毛がよりうどんになってるぞ。





「「ハチ、どういうこと」」


二人の背景にドス黒いなにか(たぶんオーラってやつ)が見える。

兵助は眉間に皺を寄せイライラがわかるけど、勘ちゃんお前…。


笑いながら怒るの怖すぎ!!


見ろ、この子怯えちゃってんだろ!



「ハチが変な名前覚えさせたからでしょ? 俺の名前は勘右衛門。 勘ちゃんでいいよ」


「かん、ちゃ」


「豆腐…。 ハチ今度絹ごし豆腐おごれよな! あ、俺の名前は兵助」


「へ、すけ!」




「「(可愛いなぁ…)」」




さっきの怒りはどこ行ったんだー。
勘ちゃんも兵助もなんだかんだでこの子に夢中だ。

ちゃっかり豆腐は今度俺に弁償させる気らしいけどね、兵助くん。


頭を撫でられ気持ちいいのか、今にも寝そうだなぁこの子。

布団敷いた方がいいか?




って、…あ。





「へ、んたい…!」







「「「『………………』」」」






『よお、変態』


「あれ、雷蔵はどうした変態」


「実習終わったの変態!」






「オイお前らあああああああ」






今日も今日とて平和です。







101109

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らっ雷蔵は委員会だったんだ
だからきっと居ないんだ;←