初めまして、人間さま。


私はあなた方人間からしたら化け物と呼ばれる類のものです。
もう慣れました。

私は猫神様と奉られていたものだったのですが、実は俗に言う半妖怪。
まだまだ妖怪としては未熟でした。



だからでしょうか?


隠れて暮らしていたというのに、人間に見付かれば捕らえられ、好奇な目を向けられました。

痛いこともされました。


助けを求めても誰も助けてくれませんでした。




だから人間なんて、大嫌いです。









昨日ニヤニヤした(格好からして商人だろう…私を売り飛ばすのでしょうか)男に捕まりました。

そして今日、私は脱走しました。



目の前には彼が雇った忍者でしょうね、きっと。
私の前に紺色の服を着た5人が立ち塞がっています。

絶望的です。


また捕まる、のですか。





「なんか警戒、されてるな」


「仕方ないよ。 この子、いろんなことされてきたみたいだし」


「まずは学園に戻って手当てしないとな」





話がわからないです。


学園? 手当て?
どうして私にそんなことをしてくれるのですか?

嘘でしょう。

そうやって私を騙すのでしょう?




『にゃ!(来ないでください)』




私は人間の言葉は理解できます。

けれど話すことはできません。



半妖の私には力が全くありません。
こうやって声を張るのが精一杯なんです。

でも怖さが勝ったのか、その声も震えてしまいました。
私はなんて弱いのでしょう。

こんな姿の私を見たら母さまは叱咤するに違いないです。




「大丈夫! そんな怖がんなくていいよ。 俺たち君を助けに来たんだから!」




いつの間にか目前に灰色でボサボサした髪の男の子が立っていました。

笑顔が素敵です。


でもこれも作り笑顔。
この言葉も、私を捕らえるがための嘘のくせに。


『っ!』


「わっ、いてて…。 でも、きっとこれ以上に痛いことされたよな。 辛かったよな、 もう大丈夫だ」




最後の抵抗で爪を立てました。


そしたら彼は普通の人間と違う反応をしました。


私を叱りませんでした。
私をぶちませんでした。


そして彼は私を抱きしめました。




『に…(何故、)』




よしよし、と彼は私の頭を撫でてくれました。
暖かい、手。

人間にもこんな暖かい手の持ち主がいたのですか。


気持ちいい。



私が引っ掻いた手が視界に入りました。
出血が、ひどい。
彼はそれには目もくれず私を優しく諭します。

「君の怪我治したいから、忍術学園に行こう」、と。



ぺろぺろ。




「! あっ、ありがとな//」


『みぅ(…ごめんなさい)』



「よし、じゃぁ三郎たちはあっちを頼む。 俺と兵助たちは学園に戻って手当てしてあげよう」







そこから私は記憶がないです。


気が付いたら目の前にさっきの男の子がにこにこ笑っていました。

どうやら私をこの忍術学園という場所で世話をしてくださるみたい。



私は彼らに恩返しをしなくてはいけませんね。
目の前にいる彼(確かハチとおっしゃってました)には特に。


…それは建前で、




ただ私が彼らに興味を持ったのは秘密ですよ。








101109

……………………
やりたかったんですこのネタ←