ぴょこぴょこ動く猫耳にふにゃふにゃ動く尻尾。
ふんわりとした可愛い顔付きの彼女は、今俺が修理しようとしているアヒルさんボートの前に居た。
おそらく彼女は五年ろ組の竹谷ハ左ヱ門が保護した(いや飼っている…?)猫の妖怪なんだろう。

にしても、


「アヒルさん…首、痛い…ですよね。名前、何とかします!え、っと、えっと、痛いの痛いの…飛んでってー、?」


一生懸命彼女は頭がもげてしまったアヒルさんボートをよしよしと撫でている。

おいおいおい、何だあの可愛い生き物はああああ!!//
そっ、そんな目に涙溜めながら寂しそうな顔して、しかも猫耳垂れてるし!
小動物みたいにふるふる震えてる彼女を後ろから見てる俺は、明らか変なやつだろう。

いやでも、……あの子が可愛いのがいけなくないか!

よっよし!
俺があのアヒルさんボートを直すっていう口実で、話し掛けてみよう!
あ、別に下心があるとか、そ、そんなんじゃないからな!//


『今アヒルさん、直してやるからな』

「!! アヒルさんの、頭っ」

『うお?!///』


ボフッ


な、なななななっ?!

彼女が目の前にいて、俺に抱き着いている?!
ぎゅーっと抱き着いて幸せそうな顔をする彼女を前に、俺は心臓の音が聞こえないかはらはらしていた。
か、可愛い…!
近場で見た彼女はやっぱり可愛らしかった。

それで…俺は男として彼女をしっかり抱きしめるべきなのか…?//
あ、でも今アヒルさんの頭持ってるからできないんだった。

ん、あれ…?


『アヒルさんの頭見っけ!…へへ』

「あ、ああ!」


彼女は俺が持ってるアヒルさんの頭をよしよしと撫でる。
な、何だ…俺に抱き着いたんじゃなくて、このアヒルさんの頭に抱き着いた、のか。
少し……いやすごく残念。

とまぁ、ともかく!

さすがにこのままのアヒルさんボートは可哀相だし、彼女もきっと喜ぶだろう。
俺はアヒルさんの頭と共に持ってきた工具を使って修理を始めた。


「わぁ…!すごい、ですっ」

『待ってろ、すぐ終わるからな』


トンテンカン。

リズムよく金づちを打っていく俺をまじまじと横で見つめる彼女。
たまにちらちらと俺は彼女を盗み見した。

っ!!
い、今目が合った気がする//


『ふぅ、こんなもんか!』

「わあああ!直っちゃいました!」


ものの数分で直ったアヒルさんボート。
破損物を修理することはもう慣れている。
これはまだまだ軽い方で、俺はすぐに直すことができた。

ほんとはもっと彼女と一緒に居たかったんだが、まぁ話せただけよかった方、だよな。
目線を向けると彼女はいきなり俺の手を掴んでにっこり笑った(え、え、おい…?!//)


「あなたの手、直せる、何でも…魔法の手!ふふっ素敵!」

『っ// お、まえ名前は?』

「なまえ…!私名前、です!アヒルさんは?」

『アヒルって……、俺は食満留三郎だ』

「けまと……う?」

『ふっ、とめでいいって』

「とめ!とめーとめー!直してくれて、ありがとですっ」


名前と名乗った彼女が可愛くて可愛くて、俺は下級生にするものとはちょっと違う、より優しい力で頭を撫でてやった。
撫でてるこっちも猫耳の感触とふわふわの髪が気持ちいい。


ああ、今日だけはアヒルさんボートを壊してくれた小平太に感謝だな。








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変態が増えた!