ああ、何でこうなってしまったんだろう。
皆みんな悲しい顔で僕に好意をぶつけてくるんだ。
嬉しい。嬉しいんだよ?
だって僕だって皆のことが好きだもの。
こういう形であれど、皆からの気持ちは伝わってくるんだ。

でも僕、
僕が愛してるって感じるのは姫香さんなんだもん。
本心を言えば会いたい。
けど兵助や皆の悲しむ顔は見たくない。
だから僕はこうやって見てる、だけ。

今だって、ほら。
校庭に姫香さんが一年生たちと遊んでる。

もし僕が校庭の前を通ったら話しかけてくれるんじゃないかとか、さりげない期待をしてるんだ。
それにこうやって窓から視線を送り続ければ気付いてくれるんじゃないかって。
僕は会いに行けないけど、姫香さんが会いに来てくれないかなって。


「名前」

『…ぁ、さっ三郎…』

「何見てんだよ。…あんな女視界に入れるな」

『………』

「名前は僕たちだけ見てればいいんだよ?」

『ひ、っ…!』


だめだ。
昨日の二人を思い出して僕は身体がビクついてしまった。
ごめんね、抱きしめようとしてくれただけ…なのに。

再度二人は僕を前と後ろから抱きしめて、雷蔵は僕の首に残る“昨日の跡”を舐め始めた。
三郎も前から僕の腰紐をしゅるりと取って…あ、さぶ、ろ!待って、だめ、だよ!//


『二人、とも…ゃ、だ!//ここ教室、』

「ん?じゃぁ名前は教室じゃなければいいのか?」

「じゃぁ今から僕たちの部屋に行こうか」

「「昨日みたいに可愛がってあげる」」


『っ//』


「ねぇ、名前いるかい?」


よく聞いたことのある馴染みの声が入口から聞こえた。
ああ、貴方は。
僕の委員会委員長の善法寺伊作先輩。
トイレットペーパーを補充してたのかな?
多めに持っているせいか伊作先輩の顔が隠れて見えない。

そうか、今日は委員会の日だ。


「名前、委員会に行こうか」

『はい。…じゃぁ、ごめんね雷蔵、三郎。僕行ってくるね』

「…何で委員会なんかするんです?」


ピタリ。

先輩の動きが止まった。
加えて空気も重いものに変わった気がする。
実質、三郎の言うことは合ってると思う。
六年生が委員長の委員会は今ほとんど活動していない。

理由はわからないけど、放課後よく姫香さんと一緒に談笑している先輩たちを僕は知っていた。


「…トイレットペーパーがないと困るし、怪我人が来たら処置してあげないといけないからね。さ、手伝ってくれ名前」

『はい。じ、じゃあね!』


二人の視線がちょっと痛かったけれど、僕は伊作先輩のトイレットペーパーを半分持って一緒に配りに行った。





「名前、」

『何ですか、伊作先輩?』

「……その首……いや何でもない。それよりも名前、さっきから気になってたんだけど、君顔色が悪いよ」

『え?』


ペーパーも配り終えて薬を煎じていると先輩から指摘された。
あれ、僕そんなにひどい顔してたのかな…?
全然気付かなかった。
まぁでも大したことないです、そう言って先輩を振り切る(伊作先輩は心配性なんだから)。

今日は皆来ないのかな…?

最近はあんまり後輩と関わるのが少なかったから、数馬に左近、乱太郎に伏木蔵…皆に会いたかったんだけど。
活動時間になっても来ていない。
実習でもやってるのかもしれないな。
だとしたら仕方ない、か。

そう言い聞かせて、棚にある薬草を取ろうとしたんだけど、


『あ、れ』


立ち上がった瞬間に目の前がぐるぐるして、平行感覚がと、れない…?
ああどうしよう僕倒れるみたい。


「名前!!」


そこから僕の視界はブラックアウト。



(下にあった小鉢、)
(割れてないといいけど)
(伊作先輩、すみません)








110318

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ヌルい裏ですね、ほんと