僕の愛しい人が隣で眠っている。 整った顔をしていて、髪も綺麗で、いつも僕に優しくて、隣に居てくれた、……幼なじみの兵助。 他の五年生の皆よりも誰よりも、彼を大切にしなくちゃって。 兵助が襲われた時思ったんだ。 僕ってほんと馬鹿だね…。 あの女を間者と気付かないで、想いを寄せてた、なんて。 でもそんな僕でも兵助は僕を愛してくれた。 僕を守ってくれた。 ねぇ、今度は僕が守る番なんだよ? 起きてよ、兵助。 君に伝えなきゃいけないことがあるんだよ。 兵、すけぇ…。 『……』 「……名前、寝たか?」 「みたいだな」 「はぁ。早く兵助も起きろっての。名前が可哀相だ」 「三郎…、兵助は病人なんだから。名前には毛布かけてあげて、僕たちも寝ようか」 「そうだな、じゃぁおやすみ」 「「「おやすみ」」」 「名前起きろ!」 『んふ…はっちゃん…?なぁに、どうしたの?』 「っ可愛い…// じゃなくて!兵助が起きたぞ!」 『え!』 いきなり肩を揺さぶられて目が覚めればはっちゃんがいた。 んー…何ではっちゃんがいるんだろう? あ!……そうか、皆で兵助と勘ちゃんの部屋で寝たんだった。 昨日、今日で僕は半ば疲れていたのだけど、はっちゃんの言葉で一気に目が覚める。 兵助は…? 目線を部屋の奥に移動させれば、愛しい人が体を起こして目をパチクリさせていた(まぁいきなり起きたら皆が居てビックリしたよね)。 目の前に居るはっちゃんに向かって「何でお前なんだよ…」って言ってる。 兵助兵助兵助兵助…! これが恋をするってことなのかなぁ? 今、僕兵助しか目に入らないよ。 「俺の顔見て第一声がそれってひどくね!まぁ目が覚めて一番最初に名前を見たい気持ちはわかるけ… 『へーすけっ』 「……名前?」 ギュッ 自分の気持ちに抑えが効かなくて、兵助は病人なのに抱き着いてしまった。 僕保健委員だから、こんなことしちゃダメってわかってるんだけど…。 兵助の顔をそっと伺って僕は離れようとした、ら。 「ごめん…」 『兵…す、け?』 「このままで居させて…」 『……』 「俺、ほんとに名前のこと愛してるんだ。だから…あの女にとられたくない。俺にあいつからお前を守らせてくれ…よッ」 兵助は僕を抱きしめながら泣いていた。 それから僕も兵助に抱きしめられながら泣いた。 嬉しくて、兵助にそう言われたのが嬉しくて。 僕も自分の気持ち言わなくちゃ! 『僕もね…兵助が好き』 「…名前」 『愛してる、んだ』 「!!! ぇ、」 『僕兵助の気持ちにやっと答えられるよ…// 大好きなんだっ兵助』 「名前っ!!」 あ、これ接吻されるなぁ。 皆の前でするのは恥ずかしいけど、でも兵助と通じ合えて嬉しくて。 僕は目をつむった。 案の定唇にふにっと柔らかい感触がしたから、僕の勘は当たってたみたいだね。 「大丈夫…あいつから絶対に守ってやるからな」 『…僕も守ってもらってばっかじゃ嫌だよ?僕も兵助を護るんだからね』 「……あぁ」 「ちょっとそこのお二人さん」 『?』「あ?」 三郎がやれやれと言った表情で僕たちの間に入る。 うん…ないがしろにしちゃってごめんね。 雷蔵も勘ちゃんも…はっちゃんも、あ、はっちゃんいじけちゃってる。 「何だよ三郎。あの女早く殺らないと…」 「私たちが殺ってきた」 「……………ぇ」 「兵助が寝てる間にいろいろあってね、名前」 『うん!』 「お前の見せ場はないぜ兵助」 「…………」 「名前を誰から守るって?」 「あんなかっこつけた告白を皆の前でよく堂々とやったなー兵助カッコイー」 「おまけに公開接吻したね」 「兵助くん恥ずかしー」 「そういうことは早く言えよお前らアアアアア!!!//」 『兵助っ、そんな暴れたら傷広がっちゃ… 「名前も名前だよ。何で言ってくれないんだ…!」 『ひえ! ご、ごめんなさい』 「今日は寝かせないからな!」 『ええっ//』 いつもの日常が戻ったみたいです。 でも前とはちょっと違って、 僕と兵助は晴れて恋人になりました! あの人には感謝してます。 僕に恋をする気持ちを教えてくれた。 もちろん兵助に対する気持ちだけれど。 ありがとう、そして安らかに眠ってくださいね、間者さん。 めでたし、めでたし。 (さよなら、) (僕の愛した、) (間者さん) 110919…………………… 終わりました! ← → |