※グロ注意です



秘密裏に、彼等は動き出していたらしい。
目の前の光景は僕にとっても彼等にとっても、そしてあの子にとっても、好ましい状況と言えた。
深夜。丑三つ時。裏々々山にて。
自称天女のあの女が地面に横たわっている。
あーあ、僕の作戦は不要だったってところかな。
ただ死期を早めるか遅めるかだけの違いだったようだね。

よいしょっと………あ。


ドサササッ


「「誰だ?!」」

『いたた…ごめんごめん、僕だよ』

「い、さく先輩…?」

「何してるんですか?」

『それはこっちの台詞だよ。……なかなか面白いことをしているね』


あの女を取り囲むように五年生の面々と名前がいた。
もちろん忍者らしい格好をして手には苦無。
名前はどうして僕がここにいるのか不思議なようで、ずっと僕を見ている。
可愛いなぁ。
いや、でもまさか、君も一緒に天女討伐なんてね。
尾浜は何て名前に説明したのかな。

ギュッと僕の忍服の袖を握られる。


「伊作先輩……あの、」


とりあえず不安そうな名前の頭を撫でることにしよう。


「俺たちがこんなことしなくても……あとニ、三日すれば、毒が回ってたんじゃないですか?」

『うん、当たりだよ尾浜』

「! 伊作先輩…気付いて…?」

『名前も。正解』

「そう、だったんですか。……ごめんなさい、僕だけ…気付けなくて」

『名前が気にすることじゃないよ。現に僕以外の六年生は気付かなかったわけだし、ね』


なんとなく、わかった。
あらかたこの女が間者だとでも言ったんだろう。
尾浜に視線を向ければ…ああすごい愉しそうな顔してる。
この機会を待ちに待ってたみたいだね。

さて、早くこの女仕留めないと。
というかこいつ気を失ってるのか、眠ってるのか、まぁどちらでもいいけど。
早く終わらせないかい?


「僕が庭に呼び出して手刀を喰らわせたんです。だから、そろそろ…」

「そうだね。早く仕留めよう。準備はできてる…?」

『準備?』


「できましたよ」


後ろからザッと登場したのは四年の綾部喜八郎。
そしてその他の四年生のいつもの面々。

君達あの女とあまり関わってないなと思ってたけど。
僕と同じで傍観してたのかな?


「……僕の作った蛸壷にあの女を入れるなんて…先輩達もひどいこと言いますよね」

「お前らだって暗殺するのにこの案出してただろ」

「その通りですが………喜八郎、」

「ぷいっ」

「喜八郎ごめんね…それからありがとう」

「…………名前先輩が喜んでくれるなら、いいです」


それにしても綾部もよくここまで深い穴を掘ったなぁ。
これは絶対落ちたら自力で上がれないだろう。
僕と五年生達は予想外の深さに驚いていた。

ズザザザーーーッ


鉢屋があの女を穴に投げた。
落ちていく。否、堕ちていく。
かろうじて僕たちは頭のてっぺんが見えるぐらいの深さ。
あれ…?
頭が動いて、顔が見えた。


「な、何これ…!どうなってんのよ?!私、名前くんに呼び出されて、それで…な、何ここ狭いよ暗いよ怖いよ!名前くん名前く」

「うるさい」


グシャァッ


「ああああああああ!」


あの女の肩に尾浜の苦無が刺さる。
本人は「あ、狙い外れちゃった!」と僕の隣でケロリとしてるけど……まったく。
それにしてもこの女、断末魔でさえもうっとうしいね。
僕も苦無を降り落としてしまおう。


グサッズシュッゴパッ


皆があの女に苦無を刺していく。
ちょっと、あれ。
皆頭は狙わないようにしてるの?
肩や手からは出血しているのに頭はまだだけど。


「や………めてっ………苦しい、何で…な、のよ…!……名前く、ん助けて…っ、伊作くっ」

「僕の大切な人を殺そうとした…許さない」


グシャァアアアッ


「…っああ゙ぁあ゙あ゙あ゙!!」


名前が降り落とした苦無があの女の脳天に直撃する。
動かない。
悲鳴も聞こえない。

終わったんだ。
これで全部が全部。
隣の名前に目を向けると、ホッとしたような顔をしていた。
うん、よく頑張ったね名前。


『これで、いつもの日常が戻ってくるよ』

「……はい」

「さ!早く穴埋めて帰ろうぜー!」

「名前ー今日は私と一緒に寝ような!」

「何言ってるの三郎、お前も埋められたいの?」

「いや、ごめんなさい」

「……ふふっ、今日は兵助と勘ちゃんの部屋で皆で寝よ!」

「「「「賛成!」」」」



(終わった終わった)
(明日からはやっと"いつも通り"、だね)








110819

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