お姫様のいない世界 | ナノ
お姫様のいない世界



なんてね



リタの案内でシャイコス遺跡へと向かう途中。
魔物から逃げまくる私に、リタは眉を寄せていた。

「あんた、結界の外に出るなら自分の身くらい、自分で守んなさいよ」

「ご、ごめんなさい……剣術は一応習ったんですが、魔物に慣れなくて……」

「ったく……」

はぁーめんどくさい。とリタは大きな息を吐いた。

「あの、よかったら魔術の理論とか教えてもらえません?」

「なんで?」

ますます機嫌を悪くするリタ。
うーん、だって理論を学べば、誰でも使えるんでしょー?
ケチケチしないで教えてよ〜

「魔術も使えれば、遠距離攻撃もできるじゃないですか」

「………この本貸してあげ…「ああ…!本はいいです!!口頭でお願いします!」

私はリタを遮った。
だって、文字読めねえもんよ。

「……しかたないわね。まずは下級魔術から覚えるといいわ…詠唱が短くて威力も弱いけど」


そして道中、エアルのことやらなんやらと、リタの講義を聞くことになった。
あっさりつかえるといいんだけど。




「ここがシャイコス遺跡よ」

リタは寂れた遺跡でそう言った。
柱が倒れていたり、所々石畳もめくれていて、植物がそこらじゅうから生えまくってる。
それだけで、人の住む場所ではない事が窺い知れる。

「誰もいないね」

カロルは人の気配すらない遺跡を見渡した。

「……まさか、地下の情報が漏れてるのかしら……こっち来て」

リタは考え込んで、歩き出した。
途中土の上に複数の足跡があるのをラピードがみつけていたので、騎士団はここに来たのであろう。

「モルディオさんは暗がりに俺ら連れ込んで、始末する気だな」

ユーリの挑発じみた言葉に、彼女はにやりと笑う。

「その方があたし好みだったかもね」



地下に案内されると、涼しく澄んだ水が私達を迎えてくれた。

遺跡、というにふさわしく、荘厳な佇まいを見せる。
やはり所々で朽ちてはいたけれど。

「そこ、足元滑るから気をつけて」

「はい」

リタが私を気遣えば、ユーリは不思議そうに目を丸くしていた。

「意外とお優しいんだな」

「……はぁ、やっぱり、面倒ごとを連れて来た気がする。一人で来ればよかった」

「リタ、そんな事言わずに、一人では危険ですから、みんなと一緒のがいいですよ」

「はぁ?危険なんてあたりまえでしょ。何かを得るのにリスクがあるのは当然だわ。それにいつもは一人でくるんだし」

「リスク……ですか。それが自分の命でも?」

「当たり前。それに魔導器はあたしを裏切らないからね」

そう言った彼女の目は少しさみしそうだった。
もちろん、彼女の過去を考えれば、納得の行く結論ではあるけれど。

リタの話によれば、シャイコス遺跡の地下は最近発見されたらしく、まだ一部の魔導士にしかしらされていないらしい。

変人といえど、名のある魔導士。
リタが地下を知っているのは当然と言えよう。


「ねえ、あれ動くのかな?」

カロルはよくわからない装置の前で立ち止まった。

「これ、使ってみて」

そう言ってリタがユーリに渡した小さな指輪。
そう!テイルズ定番のソーサラーリング!!
私は鼻息荒く、早く使ってみてください!とユーリに詰め寄った。

「こ、こうか?」

彼は戸惑いつつもソーサラーリングを打った。
ゴゴゴと鈍い音がして振り返れば、固そうなゴーレム的なのがうごきだした。
それと同時に奥の通路も開く。

「それがあれば奥まで進めるはずよ」

リタはやっぱりそっけなく言った。

「あのゴーレムはなに?」

不安そうなカロルに、リタは侵入者よけの罠よ、と更にそっけなく返していた。

「んじゃまぁ、気ぃつけて進むか」

「いいの?もっと奥に連れ込んで始末する気かもよ?」

「罠より怖いのが、ここにいたよ……」

「それ、あんたが持ってて」

リタはソーサラーリングを指差した。

いいのか?大事なもんだろ?と首をかしげた彼に、何度も使うから先頭を行くあんたが持ってて、と。


「魔導器がごろごろころがってるね」

カロルの言葉通り、その辺にふつーにころがっている。
もっとも、魔核は盗まれたあとだろうけどね。

「この子も魔核がない…」

リタは愛おしそうに魔導器を撫でた。
魔核は恐らく盗まれた後なのだろう。




遺跡の最深部らしきところにたどり着いた時、リタは勝手に走り出した。

「あ!おい!」

「うわ!?なにこれ〜これも魔導器?」

「こんな人形じゃなくて、水道魔導器の魔核が欲しいね、俺は」

ユーリは大きなゴーレムを見上げた。
動き出しそうな気配はない。

「まただ、この子も魔核がない!!」

「リタ!お前の友達がいるぜ」

ユーリの言葉に見上げると、魔導士のローブをまとった何者かが上階にいた。

「ちょっと!あんただれ!?魔核は!?」

「わ、わたしはアスピオの研究員だ!お前たちこそ何者だ!ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ!」

「はぁ?あんたバカ?あたしはあんたを知らないけど、あんたがアスピオの人間なら、あたしを知らないわけないでしょ」


「む、むちゃくちゃいうね……」


「……ちっ!騎士団といいお前らといい、邪魔の多い仕事だ!!」

男はゴーレムに魔核をはめ込んだ。途端、そのゴーレムの目に光が宿る。
青い光をたたえて動き出したそれは、一番近くにいたリタを真っ先に吹き飛ばした。

「うっうごいたー!!」

カロルは大慌て。
ユーリとラピードがすかさず攻撃に入る。

きた!きたよ!治癒術をターイム!!
私はリタに駆け寄ると、むーんと念じた。
今度はすぐに使えた。
治癒術はリタの傷を癒し、同時に彼女は私の魔導器をみて目を白黒させていた。

「あんた…これって……」

「怪我は癒えましたか?」

「………どういうこと…」

「ちょっとサボってないで手伝ってよ!!」

カロルの声が飛ぶ。
どうやら私、治癒術のコツがわかったみたい。

お次は魔術ですね!

「よし、エアルを感じて……フォトン!!」

詠唱は……忘れた。
でも出たよ!光の魔術!!
あっさり使えた。治癒術のが難しいよ〜





そのあとゴーレムを倒して、さっきのローブの男を締め上げた。
結局彼は下町の魔核の犯人ではなく、デデッキ、と言う男が帝都では魔核を盗んでいて、あとバルボスの話も聞けて、ユーリの次の目的地が決まったよ〜
ほんでもって彼はリタにのされて、縛り上げられた。
あとで警備に拾わせる、と魔物だらけの遺跡の中においてきたのだった。

ご愁傷様、なんてね。


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