満月と新月 | ナノ
満月と新月



ギルドの掟



ユーリ達は街を出てひた走っていた。


「はぁ、はぁ、正直へとへと〜てゆうか、なんでジュディス付いてきてんの?」

カロルはとても辛そうだ。
「ゆきがかり上、そういうことになったみたい」
ジュディスはニコリと笑う。
「道連れが増えんのは構わねえけど今はもうちょっとがんばって踏ん張ろうぜ」

「どこまで走る気ぃ?」

ベティはユーリを見る。


「ここから……むこうはヘリオードか。とりあえずそこまでかな」



「え〜ッ!」


ユーリの返事にカロルが野次を飛ばす。


「もう少ししたら休憩します?」
エステルが笑う。
「そ、それ賛成〜」
「カロルが力なく頷いた。
「へいへい。んじゃもう少し頑張れ」
ユーリは不敵に笑って、目線をきゅっと前に向けた。






「そろそろ休憩しようよ〜」


ずいぶんと走った所で、カロルが立ち止まった。
「あたしも、もう限界だってばぁ」
ベティはぺたりと座り込んだ。
「そうね。もう追ってこないようだし」
ジュディスが走ってきた方向を振り返る。
「……どうしてわかるんです?」

「勘、かしら」

「勘……?」

カロルが首をかしげた。
「ま、ここなら大丈夫だ。とりあえず休もう」
ユーリもふぅっと息を吐いた。



「ギルドの事も色々ちゃんと決めようね」

カロルは楽しそうに言う。
「ああ、もちろんだ」
ユーリは不敵に笑った。

「何をするギルドなのん?」

ベティが言う。
「何を、か……」
ユーリは首を捻る。
「ボクはギルドを大きくしたいな。それでドンの後を継いで、ダングレストを守る!それが街を守り続けるドンへの恩返しになると思うんだ」
カロルは拳を握った。

「ドンへの恩返し……」

ベティは噛みしめるように呟く。

「立派な夢ですね」
エステルは嬉しそうだ。
「オレはまぁ、首領について行くぜ」
「え?ボ、首領?ボクが……?」
「ああ、おまえが言いだしっぺなんだから」
「そ、そうだよね!じゃあ、何からしよっか!」
カロルは興奮気味だ。


「とりあえず落ち着け」
ユーリが笑う。
「うん!」
カロルは大きく頷いた。

「ふふっ……なんだかギルドって楽しそうね」

ジュディスも楽しそうに笑う。

「ジュディスも入ってはどうです?」

エステルがジュディスを見た。

「あら、いいのかしら。ご一緒させてもらっても」



「ギルドは掟を守ることが一番大事なんだ。その掟を破ると厳しい処罰を受ける。例えそれが友達でも、兄弟でも。それがギルドの誇りなんだ。だから掟に誓いを立てずには加入は出来ないんだよ」



カロルが真剣な顔をした。
「カロルのギルドの掟は何なんです?」
「えっと……」


「お互いに助け合う、ギルドのことを考えて行動する。人として正しい行動をする。それに背けばお仕置きだな」


カロルが言い淀むと、ユーリが答えた。
「え?」
カロルはびっくりしたようにユーリをみる。


「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのために。義をもってことを成せ、不義には罰を、ってことですね」


「掟に反しない限りは、個々の意思は尊重する」
ユーリはカロルを見た。
「ユーリ……それ……」
「だろ?首領」

「ひとりはギルドのために、ギルドはひとりのため…………う、うん!そう!それがボクたちの掟!」

カロルは嬉しそうだ。
「今からは私の掟でもある、ということね」
ジュディスはにこりと笑った。
「そんな簡単に決めていいのか?」

「ええ。気に入ったわ、いいわね。掟を守る誓いを立てるわ。私と……あなたたちのために」

「あんたの相棒はどうすんだ?」
「心配してくれてありがとう。平気よ、彼なら」
「相棒って……?」
カロルはジュディスを見る。

「前に一緒に旅をしてた友達よ」

彼女はにっこり笑った。
「へえ、そんな人がいたんだね。じゃあ今日からボクらがジュディスの相棒だね」
「よろしくお願いね」
「よろしく!」
カロルが笑う。

「ワン!」
「わたしは……」
エステルが俯いた。



「ま、とりあえず今日はもう休むか」
ユーリは火を起こす準備をし始めた。

「そうだね。クタクタなの忘れてた」
カロルもベティの隣に座った。


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