満月と新月 | ナノ
満月と新月



5・Time



「あのさ、こんな時間に2人で出かけたらバレバレじゃないかしらん?」


「バレバレでいいんじゃねえの?」

「……あたしが嫌なんだけどぉ」

「こっそり出かける方が嫌だろ?それかみんなが寝てからする方がいいとか?」

「なんて事言うのよん」

「冗談だよ」


エステルの家を出て、街へ出た2人。
適当に理由をつけて出かけたが、ジュディスやリリはわかっている事だろう。

ベティにとってはそれがどうも恥ずかしい。



「……やっぱ戻ろうかしら」

そう言って立ち止まった彼女だったが、ユーリに腕を引かれ歩を進めた。

「いいから」


「なにがよっ全然よくないわよっ!」


スタスタと彼は街を抜けていき、ハルルの樹の裏側、民家が建っていないどちらかと言うと花見向けの小路へと向かう。

夜の街を、結界の光輪が照らす事は最早ない。
それゆえ人がいない場所は以前よりも暗く、今日は満月が照らしてはいるが、暗い。


ユーリは樹の根が隆起した場所で立ち止まると、くるりと振り返った。


「前はもーちっと素直だったのによ」

悪戯っぽくそう言って、ベティの首筋に噛み付く。
強く吸われた彼女の柔肌には、簡単に赤い花が咲いてしまった。


不満そうに眉を寄せた彼女は、ユーリの開いた胸元に手を滑り込ませる。


彼の硬い筋肉を指先で撫で、どちらからともなく唇を重ねれば、懐かしさすら覚えるほど長い間触れ合っていなかった事に気づかされてしまった。


「むちゃくちゃにしちまうかもしんねぇ……」


ユーリは困ったように呟いて、ベティを強く抱きしめる。

夜の空気が気持ちいいのか、彼の腕の中が気持ちいいのか、彼女の気分はとてもよかった。


見つめ合う視線がとても熱を帯びていて、彼女の薄茶色の瞳は誘うように潤んでユーリを見つめ返す。


「……して…?」

彼女は強請るように言って、彼の肩に手をまわした。


「後悔すんなよ……」

ユーリはもう一度口付け、当たり前のようにぬるりと舌を滑り込ませた。
熱い舌と舌とが絡み合って、唾液がまざる。
彼の手はベティの耳をくすぐって、彼女はぶるりとわずかに震えた。

「ん…ふっ……」

きっとこれは、とても幸せな事なのだと思う。

ベティにとって1番居心地のいい居場所が、ユーリのそばだから。


もっと一緒に居たい。

そう思えるのは必然。


ユーリの手は胸元へ伸び、口付けは激しさを増していく。

はぁ、と時折互いの吐息が漏れる。


初めて2人が繋がったのも、皆から離れた夜だった。
ユーリにとっては、掴めそうで掴めないベティの存在を、初めて近くに感じた夜。


ベティの右手がユーリの背を撫でる。
彼は上着の中に手を滑り込ませ、胸に触れた。
こねるように握って、離して、捲りあげた上着から露わになった先端を口に含む。

「あっ……」


「あんま声出すなよ、外だからな」

そう言ってまた彼は舌を動かす。

「んっ……あっ……」

ベティは久しぶりの快感に、僅かに震えていた。

温かいユーリの舌がいやらしく動き回り、それだけでもうすっかり濡れ始める。

吸ったり甘噛みしたりと、彼の舌は彼女の性的な気持ちを酷く高ぶらせ、ベロベロと舐められたり、押さえつけるように押されたりと、一定の気持ちよさに留まってはくれない。

その刺激がさらに愛液を増やして行く。

「……ぁあっ……んっ…んっ…」

愛らしさといやらしさを含みながら、ベティの口からは声が漏れる。

ユーリは彼女を樹の根に座らせ、スカートを捲った。

そして下着の上から舌を当てる。



「ユーリっ!!」



ベティはとっさに足を閉じたが、彼はぐっと両手で押し返した。

「シャワーしてないし!舐めないで!…それに下着が……」

彼女はもごもごと抗議したが、ユーリはにやりと笑うだけだった。

布越しに彼の熱が伝わってきて、さらに中がうずく。


少しもの足りない刺激に、ベティは腰を無意識に揺らしていた。


「あっ……もっと……」

ユーリは下着をずらし、そこに舌を滑り込ませる。

「んぁっ…あっ……」

急に鮮明になった刺激に、彼女の身体はびくりと返事を返す。
ぬるり、ぬるり、と舌が動き回る。
クリトリスを擦っていくたびに、もっとして欲しい、と中からは愛液が滴っていた。

舐めるのをやめないで、彼は下着を取り去ると、中へと指を滑り込ませた。


「ああっ!」


するりと滑り込んだ指が、上の方をこする様に撫でる。


「すげー濡れてる。簡単に食われちまった……」


ユーリもかなり興奮しているようで、ズボンの中は窮屈そうだ。


彼は指をいれたまま上の方を押すように刺激し、クリトリスを吸い上げた。


「…あぁっ……んっふぁっ……あっ…」

なくような可愛い声、と彼は密かに思った。

くちゅくちゅと中では音が鳴り、彼が吸い上げる音も鳴る。

ベロリと

舌を這わせながら

じゅるりと

吸い上げる。


ベティは快感もかなり高ぶっているようで、意識せず腰を動かしていた。

「もぉ……っ…だめ……イっちゃうっ」

その言葉で彼はさらに激しく攻め立てる。

「あっあっ!!…ぁああっ…ふぅんっっ…あぁっ…!」

彼女は必死に声を抑えようとしているのだろうが、残念ながらいつもと変わらない。

ユーリは指を動かしたまま、自身のズボンを下げた。
ベティの中はきゅうきゅうと締め付けてくるし、びくびくと震えてもいた。
イった後はいつもこうだ。


息の荒い彼女の快感を寝らせないうちに、彼は硬く、大きくなった自身を中へとつきたてた。


「ひゃぁっんっ!」


はっと息を吸い込むベティ。

休む間も与えず、ユーリは腰を動かした。

「あっ!……あっ!」

声を出すな、という彼の発言を、彼女はすっかり忘れているようだ。

それが嬉しい。男冥利に尽きるというもの。


「やべぇ…めちゃくちゃ気持ちいい…」

彼はぎゅっと眉を寄せる。

このままだとイきそうになる、と思い、
抜いてからベティを後ろ向きに立たせた。

ぐいっと腰を突き出す形で彼女の身体を曲げさせ、そこに彼はもう一度自身をゆっくりと入れた。


「……んっ…あ……」

激しく奥をつけば、ベティは腰を大きく反らせた。

パンパンと肌が打ち付け合う音が響いて、彼女の背中が汗ばんでいた。

ベティの腰を持ち、ユーリは突き上げるように腰を振る。

「あっ…ぁ……あぁっ……」


彼は、胸に手を延ばし、先端をつねるように刺激する。
乾く事のないベティの中は、ぎゅぎゅうとこちらを吸い込んで気持ちがいい。

ユーリは今までこんなにも相性のいい相手はいなかった。

そんなものだと思っていたし、誰とでも変わらないと思っていた。
だが、気持ちが満たされて体を重ねることが、こんなにも心地いいものだと気がつかされたのはベティの存在。


特別。それ以外に言葉が見つからない。


もう一度ベティの身体を樹の根に座らせ、今度は向かい合って挿入した。

「ユーリっ……イっちゃいそう………」

「……ん……俺もそろそろヤバい……」

ユーリは少しスピードを速めた。

「……ぁあっ……あっ……きもち…いい……っ」

ベティはぎゅっと彼の腕を掴んだ。

「……イけよ…気持ちいいんだろ?」

彼は激しく奥を突く。


「あぁ!だめっ…!あっ…あっ……んぁっ…」

「俺もう限界……」


「あああぁっ!!やぁぁあんっ……!!」

ぎゅっと握った彼の腕に、ベティは爪を立てた。
脳天まで突き抜けるように震える快感は、いつもの何倍にもなって襲って来る。

「イくぜ……っ……ぅっ……」

ユーリは小さく呻いて、ベティの中へと種を残した。
どくどくと吐き出されたそれは、彼女をさらに震えさせた。

「……はぁっ…あっ…ぁっ……」

余韻はまだベティを刺激していて、脈打つユーリのそれを締め付ける。


抱きしめあって熱を感じ合えば、互いに荒い呼吸と心臓の煩さを感じた。









「魔導器、外さないのね」

レミエルの居た根元の広場で、ベティとユーリは座り込んで樹を見つめていた。
もうすぐ満開の季節が近く、咲きかけた蕾が少し色づき始めている。


「おう」

ユーリは手首の魔導器、今はもう魔核のない筐体を見つめた。



「ラピードは煙管。フレンは剣。ユーリは魔導器……そしてあたしには………ない!」


ベティは声を張り上げる。


「ヒスカやシャスティルもなんもねえぞ。隊のみんなもな」


「そういう問題じゃないのよぉ…だったらユーリたちはなんであるのよん」


「たまたまだろ、近くにいたしな。それにラピードは自分で持ってきたんだぜ」

ユーリの言葉に、ベティは不満気に頬を膨らませた。



「あの頃落ち込んじゃって…葬儀も間に合わなかったし」


はぁ、とため息をつく彼女を見て、彼は肩を竦めた。
少しさみしそうな彼女の横顔。
それを見つめながらユーリは優しく笑い、言った。


「………行くか?シゾンタニア」


その一言で、ベティはきょとんと目を開いた。


「ジュディに頼めば遠いところじゃねぇだろ。もうなんもねえかもしれないけどよ」


「そういえば……住民全員引っ越したって聞いてから行ってないわねん」


「じゃあ決まりだな、エレアルーミンの帰りにでも寄ってもらおうぜ」






[←前]| [次→]
しおりを挟む