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電伝虫を借りたいと言う○○○の頼み通りにブルーノが店の電伝虫を貸してやれば、可哀相なことに店の常連客どもが邪魔をしてしまった。これは手に負えないだろうと、ブルーノが代わってやり***と○○○には好きにしているように言ったのだった。
話が終わり受話器を置き二人を見ると、***はカウンターから、○○○はカウンターの席に着いて仲良く話をしていた。


「もうしばらくお話してられそうですね」

「そうでありますね。***さんは船大工の方々と仲がいいのでありますね」

「はい!皆さん優しい人達で、ぼくはいつもお世話になりっぱなしなのです」

「そうなのでありますか?***さん、とても大人びているのに…」

「そんなことは…!それを言うなら○○○さんだって大人びているであります。……あ」

「あ、私の口調が移ったであります!」

「ひゃああああ!ごめんなさい!決してわざとでは…!」


あははと無邪気に笑う○○○に***はひゃあああ!と顔を赤くしながら手で隠す。

微笑ましいその光景。
思えば二人は似ている。年も同じぐらいであるし、お互いに大人びていて礼儀正しい。町には子供はいるが、こんな風な似たような性質の子はいなかった。だからこそ、***と○○○はほんの短期間で仲良くなれたのかもしれない。

***はまだ赤みの残る顔で○○○のカップにお茶が入っていないのを見ると、ポットを掲げてみせた。


「お茶のおかわりいりますか?」

「あ、よければ下さい。***さんのお茶おいしいでありますから」

「コツがあるんですよ!こうやって…」


***はポットに手を添えると、小さな赤子でも撫でる要領でポットを撫でる。


「いい子、いい子!…と声をかけてあげると、美味しくなるのですよ!」

「そ、それは知らなかったであります…!」


驚く○○○に***が『どうぞ』と紅茶のおかわりを差し出せば『どうも』と○○○もぺこり。


「ホーキンスさんはいつも無言で淹れてくれるでありますから…」

「ホーキンスさんも紅茶を飲む方なんですか?」

「はい!私の寝付きが良くないのを知ってから、ホーキンスさんが夜にお茶を淹れてくれるようになったのであります」

「へー。いい人なのですね」

「はい。いい人、であります」


***が淹れた紅茶を、○○○は湯飲みを持つような持ち方で手にとると、少し困ったように笑った。


「私も***さんと同じであります」

「え?」

「私もホーキンスさんのお世話になりっぱなしなのであります」

「…そうですか」


○○○がカップに口を付けてほっと息をついた後、ぱちりと***と目が合うと、二人してえへへと苦笑った。


「ぼく達はやっぱり子供ですね」

「子供でありますね」

「ぼくは最近特に、早く大人になりたいと思うんです」

「私もであります!」

「……○○○さん!」

「……***さん!」


ガシッと二人はお互いの小さな両手を握りあった。そして熱く見つめ合い、二人は語り合うのだった。


「お互い、がんばりましょう!」

「はい!もうお世話になるだけの子供の自分とはおさらばであります!」

「そうです!大人になるのです!」


おー!と声を張る二人は間違いなく子供で可愛かったと、後にブルーノは語った。





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通常より少し、というか大分早くルッチ達は仕事を切り上げて、ホーキンス海賊団を伴ってブルーノの店に向かっていた。
というのも、あの後アイスバーグがやってきて、揉めているルッチ達を見つけると何事かと声をかけてきたのだ。船大工、海賊の両方の話を平等に聞くと、アイスバーグは考えるまでもなくホーキンス達にこう告げた。


「ンマー!悪かった。うちの船大工達が大事な連絡を邪魔したようで」

「全くだ!見ろ、あの船長を!」

「あぁ。あれは相当怒ってるぞ」

「ンマー!そうなのか?」


どう見ても怒っているようには見えないホーキンスを指さして、その代わりとでもいうように船員達は怒りを顕にアイスバーグに言った。そんなに怒っていると言うのなら、市長で社長な自分が直接謝罪しない訳にはいかないだろう、とアイスバーグは座ってカードを並べているホーキンスに近寄った。


「その、うちの者がお前らに失礼なことをしたようで悪かったな」

「……」

「詫びと言っては何だが、お前達の船はうちの一番腕の立つ1番ドックの奴らで見るから、それで許しちゃくれねェか?」

「…だめだ」

「え」


まさか否定されると思っていなかったアイスバーグは言葉を詰まらせる。

これ以上のこととなると金だろうか?見かけは海賊らしくなくとも中身は海賊らしく強欲だな…。

と思ったが、そうではなかったことがホーキンスの次の独り言で判明した。


「何度やっても、あいつらの『生存確率』が"0"にならない…」

「パウリー!カク!ルッチ!お前ら今日は急ぎの仕事済ませたら上がっていいぞ!そしてこの方をすぐにブルーノの店に案内して差し上げるんだ!!」


船大工達の命の終わりを静かに願われていることを知って、アイスバーグは肝を冷やしながら叫ぶのだった。



───と言った次第である。



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