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「……」
『あのですね、この電伝虫は○○○さんがかけたものでして…』
「○○○?誰だ、それは?」
「…おい」
『えっと、そちらの電伝虫の持ち主の方々の…』
「お前ら***とどういう関係だ!?」
「そ、そんなヤツ知らねェよ!」
「……おい」
『あのパウリーさん!話を…』
「そうじゃ、***。ワシが開けた酒はまだ残っとったかのう?」
「………おい」
『え?えーっと、はい!まだありますよ!』
「カク!そんなこと今訊くな!」
「いいじゃないか。ついでじゃ!」
「………………」
『あの…。そろそろ、ホーキンスさんと話したいのでありますが…』
「……!」
***ではない遠慮がちな声が聞こえたと思ったその時、受話器を独占する三人の背筋を悪寒が伝った。
何だ?と思っていると、只今受話器を持っているルッチの肩をガシリッと黒い手が掴んだ。ギギギ…と錆びた音がしそうな感じでゆっくりと三人は首を背後に回した。するとそこには、
「……」
恐ろしく無表情なホーキンスがいた。ホーキンスの無言の圧力に、ルッチ以外の二人は顔を引きつらせ、そしてホーキンスの次の一言。
「返せ」
逆らう訳ないであろう。
「いやぁ、すまんのう!」
「悪かったなー、アンタ!」
パウリーがルッチの手から受話器を取り返してホーキンスに渡す。恐怖のあまり大の大人二人が何故か仲良しこよしとルッチと肩を組みながら気持ち悪い笑みを浮かべていたが、ルッチだけはホーキンスを睨んでいた。
そんなことには目もくれず、ホーキンスは気を取り直して受話器に語りかける。
「○○○。今代わった」
ドキドキと電伝虫からの反応を全員が見守る中、電伝虫は野太い声で返事をした。
『あー、…すまん。こっちも今代わった』
ブルーノの声だった。
最悪だー!
なんてタイミングで変わってんだ、ブルーノォォォォ!!
「…誰だ」
『ブルーノズ・バーの店主をしている者だ。うちの***がお宅の○○○に世話になったようで、今は二人ともおれの店にいるんだ。それで話している内に二人が仲良くなってな。そこで騒いでた船大工がおれの店を知ってるから、そいつらの仕事が終わったら一緒に迎えに来るということでどうだろうか?』
「…仲が良いのか?」
『あぁ』
「…楽しそうか」
『あぁ』
「そうか」
『……』
「分かった。そうしよう」
『そうか、じゃあ○○○にもそう伝えておく』
「頼んだ」
がちゃ、と電伝虫が言ったのを最後に通話は切れた。
ホーキンスは静かに受話器を置き、そしてじろりというかもうギロリと音がしそうなほど鋭い目で船大工三人を見た。震え上がる船大工(ルッチは除く)。
しかしホーキンスはそれ以上何もしようとはせず、電伝虫を船員に返してまたどかりと積み上げられた木材に腰掛けるのだった。
それを見届けると、今まで黙っていた船員達が怒りの形相でルッチ達に詰め寄った。
「アンタらなんてことしてくれたんだ!船長、ずっと○○○からの連絡待ってたんだぞ!」
「それを邪魔するなんて、この人でなし!マジ人でなし!!」
「わ、悪かったって!そこまで言わなくてもいいだろう」
「言うわ!見ろよ、あの悲しそうな船長!見てるこっちがつらくなるわ!」
「……どの辺が悲しそうなんだっポー」
「お前らに分からなくても、おれらには分かるんだよ!」
船大工達が珍しくぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる海賊に押され気味な横で、ホーキンスは一人カードで占いを初めていた。占うのは自分の運命ではなく、そこにいる三人の船大工たちのこと。
丁寧にカードを並べていき、出た結果を口にする。
「『生存』死亡率……0%」
今日、あいつらは死なない。
「……残念だ」
物騒なことが呟かれたことは、幸か不幸か誰の耳にも届かなかった。
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