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「ブルーノさん、ただいま帰りました」
「あぁ、おかえり…!?」
現在の***の帰る場所であるブルーノズ・バーに着いた時、店のカウンターにいたブルーノは少年に抱きかかえられている***を見て目を瞠った。
え?
誰、その子?
というか、これどんな状況?
何があってそうなったんだ?
洗った皿を拭いていた手が止まってしまうほど驚いていると、***を抱えている少年は近くの椅子に***をそっと降ろした。
「ありがとうございました。…あの、重くありませんでしたか?」
「いえいえ。今までの中で一番軽かったでありますよ」
二人の少年の会話で、はっと我に返ったブルーノは***達の側に歩み寄る。
「***、何があったんだ?」
「ブルーノさん、実はさっきこの方に…」
訊ねてからブルーノは***の腕に目が釘付けになる。昼にここを出る時にはなかった擦り傷が、***の腕に。
そのブルーノの視線に気付いた見知らぬ少年が、ブルーノの服の裾を引き申し訳なさそうに頭を垂れた。
「申し訳ありません。私のせいでお子さんを傷物にしてしまったであります…」
「え゛」
「そんな!あなたのせいではありません!寧ろ助けていただいて、ぼくがお礼を言わないといけないぐらいです!」
何か誤解を生みそうな単語が聞こえたが、***の様子から考えて何があったのかは大体予想がついた。ふぅ、と一息ついて、ブルーノが頭を下げたままの少年の頭を大きな手で撫でると、少年は顔を上げた。
「とりあえずは、怪我の手当てだな。手伝ってくれるか?」
「も、もちろん!」
「それじゃあ、えー…」
「あ、私のことは○○○と呼んで下さい」
「そうか。おれはブルーノだ。そしてこの子が」
「ぼくは***です!先ほどは助けてくれて、本当にありがとうございます」
ぺこりと、***が頭を下げると○○○はあわあわと戸惑いながら『ちゃんと助けられなくてすみませぬ』とこちらもぺこり。
小さな少年が律儀に頭を下げる姿が微笑ましくて、ブルーノは顔を緩ませながら○○○に***の傷を洗うように頼んだ。その間にブルーノは救急箱を取りに行くのだった。
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***の怪我の手当てをして、最後に包帯を巻き終えた頃、まだ開店前にも関わらず店のドアがノックされた。
不思議に思いながらもブルーノがドアを開けると、そこには泣きじゃくる幼い少女と切羽詰まった顔をした母親と思しき女性が立っていた。何でも、***の上に落ちてきた植木鉢はこの女の子が誤って落としてしまった物らしく、母親が慌てて下を見ると見知った顔の***を見つけて、親子共々謝罪に来たらしい。
「***君!本当に、ごめんなさい!!」
「ご、ごめん、なさいっ…!お花さんにっ、お日さまの光をあてようとしたら…落としちゃって…」
嗚咽交じりに女の子が謝るのを見て、***が許さない訳がない。
***は包帯を巻いた腕をぐるぐる回して元気に言った。
「大丈夫ですよ。ぼくはこんなに元気ですから!このお兄さんに助けてもらいましたからね!」
「お、お兄さん…?」
「お兄ちゃん、***お兄ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」
『お兄ちゃん』という言葉に動揺する○○○を余所に、女の子が泣きながら頑張ってお礼を言うと、○○○はどこか照れてたように頬を指で掻きながら笑うのだった。
最後に母親とブルーノが少し話した後、親子は帰って行った。
「さて、大変な目にあったな。***」
「もう済んだことですから、いいのですよ」
へにゃりと、笑顔で言うこの子は本当に優しい子だ。
ブルーノは改めてそう思った。
そして次にブルーノは○○○に向き、訊ねる。
「で、○○○はどこの子なんだ?観光客か?」
「何でもいいだろう」
そう答えたのは勿論○○○ではない。声のした方を見ると、カウンターに一匹の黒猫が丸くなっており大きな欠伸を一つ。そしてこちらに視線を寄越して一言。
「俺は帰りたくねぇからしばらくここにいる」
「え!?ちょ、玄冬さん!」
「あとはお前ら、好きに仲良くしてろ」
それだけ言うと、○○○に玄冬と呼ばれた黒猫はそのまま眠ってしまったようで、後には静寂が広がった。
「……」
「……あの、すみませぬ」
「い、いいですよ!ね!ブルーノさん!」
「あ、あぁ。開店までまだ時間があるし、構わないさ。ゆっくりしていくといい」
「す、すみませぬ!本当に」
黒猫の横暴さもあって、○○○はもうしばらくいることになった。
「そうだ!お茶を淹れましょうね。あと何か茶菓子も」
「い、いいでありますよ!***さん、お怪我をしているのに」
「○○○さんのお陰でもう大丈夫ですよ」
いけませぬ!大丈夫です!
そんなそんな。いえいえ。
子供らしからぬ気づかいと遠慮の攻防がブルーノの前で繰り広げられている。
見た目はどちらも可愛らしい少年で、やきもきしている二人の姿はとても、とても微笑ましかった。
ルッチあたりがこの姿を見たら、間違いなく***を抱き締め頬擦りすることが予想され、ブルーノは二人を守らねばと使命に燃えながら、そういえば冷蔵庫にケーキがあったな、と思い出していた。
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