07


とりあえず何の成果に繋がるかは別として、酒場で働き始めてすぐの頃からアルス宅にちょくちょくお邪魔するようにしていた。手土産にお菓子を持って訪れることももうしょっちゅうの事で、もうかなりの種類を購入した。今度は自作してみようと思う。ジャムから手作りのパンケーキとかいいんじゃないだろうか。
基本的に家にはマーレさんが居た。最初は驚いていたが城下町で働いていることを告げると、良かったねえ、と微笑んでくれた。俺もこんな母ちゃん欲しい。
たまには仕事終わりに顔を出し、ボルカノさんとお酒……は俺は飲めないのでジュースで乾杯したりだとか、そんな事をしていた。そういえばエスタード島の飲酒制限ってどんな感じなんだろう。いつもは注ぐ側なのであまり気にした事はなかった。

そんなある日、休日の夕方にお邪魔しているとアルスが帰宅した。一度、酒場の方で話をしたのでこれで三度目の顔合わせとなる。

「あ、アルスくんこんばんは!お邪魔してます」
「どうも……」

ほらみろあからさまに控えめだ。やっぱ俺の事嫌いなんだろうな。だからと言って引き下がる気は無いけれど。
アルスは居間で何をするでもなく自室の方へ行ってしまった。

「マーレさん、アルスくん俺の事嫌いなんですかね?」
「どうだろうねえ。そればっかりはあの子に直接聞いてみないと。ま、あたしはレツちゃんのこと好きだけど」
「ふふ、ありがとうございます」

別に今の感謝の言葉が嘘というわけではないのだが、それに伴う笑顔について。近頃営業スマイルが身にしみついている事をつくづく感じる。これもアルスから見ればただ胡散臭いように見えるのだろうか。

「すみません。アルスくんとお話してきますね」
「仲良くなれるといいわね」

その言葉に一礼し、アルスの自室の方へ足を運ぶ。梯子を数段上ったところでベッドに腰かけるアルスと目が合った。

「や、どうも。ねーえアルスくん、ちょっとお話いいかな」

きっとこの声のかけ方も胡散臭いと思われてんだろうなあ。一度苦手視してしまえばそう簡単にはイメージを変える事なんてまあ相当の事が無い限り、なあ。

「……どうぞ」

ごめんな、これからもっと怪しいことしちゃうけど許して。










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