06


話すことは嫌いじゃなかった。イコールで繋がるわけでもないが接客もまあ苦手には分類されないだろう。
まあなんとかなりゃーいいかとそれくらいの軽いノリで酒場のねーちゃんやってみるかなあと考えていたら見事に働けることになった。アルスが女に見える、と指摘してくれたのが上手く事を運んでくれた。
正直水商売なのかどうなのか詳しいことはよくわからないが特に抵抗はなかった。給料高そうだし。日本の基準で言えば多分俺の年齢で雇うとアウトなのだろうが。

働き口が決まったと同時に考えるのは物価やら、ゴールドのお話。ゲームをプレイしていたが、物価、物流その辺りの情報は入ってこない。システム的に終盤に近づくにつれて物価が上がっていく事は理解しているが、それで世界の金銭的事情は均衡を保てているのか。もちろん俺のいた世界(既に過去形で表せられることに少し落ち込んだ)では、物価の違いなんかは当たり前のようにあるのだが。値段が上がるのは武器、防具やらに限定されていて日用品なんかは金額に大差ないのか?
ぶっちゃけるとエスタード島の税金の仕組みすらも理解していない。それくらいのレベルなのだ。もしかすると納税という概念すら無いのかもしれない。
現実的に考え詰めると矛盾点がいくつか出てくるのはこれも、システムというかこの世界自体作り話なので仕方がない。結局深く考えない事にした。

もうひとつは、いつアルスらの旅に合流するかということ。
正直言ってしまえば、そんな事をする必要性は全くない。これから酒場を辞めてしまうような事が無ければ、生活は安定するはずなのだ。一人身だし。しかしせっかくこの世界に来たからには一度くらい魔物と戦ってみたい。誰かこの無駄な好奇心をなんとかしてくれ。
アルスらの旅が順調にストーリーに沿って進めばいずれエスタード島にも魔物がうろつく日が来る。それが何年先のことか定かではないが。しかもそんな終盤の強烈な魔物と対峙するなんてまあ不可能なわけで。瞬殺される。
とにかく今後の希望として、できれば旅をしたい。可能ならユバール攻略までにはなんとか無茶な行動を起こしてでもパーティに加わりたい。そうするならば、もうそんな悠長にしている時間は無いかもしれない。遅くとも一ヵ月後には行動を起こすべきだ。どんな言い訳をしてひっつき虫しようか。

そんな事を考えていると酒瓶を落としてしまった。










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