04


その後目を覚ました俺はその場にしばらく留まっていた。運良くアルスらに出くわすことができたら、この先生き延びやすいとも考えてのことだ。次に攻略するのはどう考えてもエンゴウしかありえない。だからここ、赤の台座の間で待っていた。結局めぐり合う事はなかったが。
その間考えていたのは今何時なのかということ。普段から腕時計を装着する癖もなく、時間がわかるものを何一つ持っていない。持っていたところでこちらの時間にも対応しているのかどうか微妙なところだが。帰宅したのは5時くらいで、こちらにやって来た時間は不明。現世と同じ時間なら陽が暮れていてもおかしくないのだが、確か謎の神殿にたどり着いた時間にはまだ夕暮れ程度だったはず。それから、少しして眠ってしまったので全く見当がつかない。外に出てみれば昼か夜かぐらいはわかるのだろうが。それから1時間ぐらいは考え事をしていたと思う。制服のポケットから出てきた500円玉と100円玉をどうにか利用して一時の生活費の足しにでもできないか、とか。働くにはどうすればいいだろうか、とか、こんな狭い島なのにいきなり知らない奴がいたらやっぱまずいよなあ、とか。
とにかく考えれば考えるほど、ウッドパルナが現代に復活しない限り行動は制限されるどころかこの島で生きていくのはかなり困難な事だと改めて思えた。

それからしばらくしてから来た道を引き返し、フィッシュベルを目指した。
外に出た時点では明け方で、うっすら明るい程度だった。とにかく様子を見よう。途中すっ転んで打ち所が悪く足を怪我をしたのはとんだ災難だった。その瞬間狙いが見えた気もした。実行してもいいかな。
それを考えながら足を引きずっていればすぐにフィッシュベルにはたどり着いた。

入り口付近で村人が何やら会話を交わしているのを目にし、そっと聞き耳を立てた。どうやらこのエスタード島の北に突然島が出現しただとか。アルスらがやってくれたんだ。これで、俺はウッドパルナから来た体で話を進められる。

午後。巧とも言えない、話術なんてものもない会話で交渉し無事狙い通りアルス宅に宿泊する段取りを踏んだ。一晩だけ、と言っておいたが流れでそのまま居候してしまえ、ぐらいの意気込みで話を持ちかけた。玄関先に出たマーレさんは優しくて、途中で荷物を落としたと言えば同情してくれた。多分ないだろうが詐欺には気をつけていただきたいものだ。自分がやっていることも全く嘘がないだとか、騙していないかと言えばグレーゾーンに含まれるだろうが悪意があってやっている訳では無いのでどうか見逃していただきたい。

それから数時間後には最高の想定通り、アルスが帰宅した。わあー本物だ、と内心かなり興奮気味ながらも、落ち着いて流れに乗り自己紹介をする。既に思い込んでいるだろうが軽くウッドパルナ出身だということを告げておく。



「はぁ、そんなこと言われたの初めてだなあ……はは……うーん、女に見える、か……そうだなあ……」

どうやら女だと思われていたらしい。それと同時に、うっすら感じ取れる。アルスってば俺のこと苦手視してるな。そりゃあそうだ。アルスらからすればこんな動きにくそうな(実際制服のシャツとネクタイ、スラックスなので動きにくい)、見たこともないような服を着て旅だなんてそりゃあ不信感をあおるだろう。
それよりも、だ。俺女に見えるのか。ここに来て新たな発見をした。それならば、と思いついた事はとてもくだらなくて心の内で笑い飛ばしてみたが、案外いけるかもしれない。上手くいけばこれからの生活も安定するかもしれない。これは試す価値は十分にある。

「うん、良いアドバイスになったよ。ありがとう、アルスくん」

その日は出された料理を平らげ翌日の予定を頭の中で組み立てながら就寝した。








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