30





船に揺られる。不思議と想像よりも酔わなかった。海は静かで大きく揺れることもなかったからだろうか。

グリンフレークでぺぺを治して、出て行くまでを見届けて、その後外れの洞窟の方へと足を伸ばした。毒の沼地の中心に入り口が穿たれていて、そこに行くにはぐつぐつと煮えるように動く紫色の地面を歩かねばならない。嗅いだことのない臭いもする。
おぶってくれなきゃ歩かないと嫌がってみたが、ガボにどつかれた。またしても。倒れまいと一歩踏み出したそこはもう毒の沼地で、足の裏からなんとも言えない気持ち悪い感触が頭までを走り抜けていった。ビリビリするような、ぞわぞわするような。あの、ざざ、とかそういうようなノイズが入る感じが相応しい。というかまさにそれだった。これは、おぶられてもダメージ受けるんじゃないだろうか。

なんと、洞窟まじんは俺がとどめをさした。最奥まで行く間にかなり感覚を掴んだらしく、自分でも驚くほど相手の攻撃を恐れることも減った。駆け出して、武器を振るう。キーファの真似事も、アルスの真似事もした。しかし、敵は身をひとつひねっただけでそれを躱す。読みやすいらしい。
しかしそんなことを自らを危機に晒してまですることなのか。疑問視したが、快感を得ているのも事実で。これからもっと強くなれると思うと少し楽しかった。


「レツ、気分悪くないか?」
「え?うん、大丈夫。ありがとう」

見上げたら、じゃあ良かった、と金色の髪をきらめかせキーファが笑みをみせる。
ここは船上。晴天、穏やかさで辺りを包む海。目的地に、着いたようだ。皆、順番に船を降りていく。船の管理はアルスを中心に行っているため、アルスのみ少し出遅れて地に立った。
初めて到達したように思うけれど、何年も前、この地に立ったことはきっと嘘じゃなくて、事実なんだろうからおかしな感覚。


廃れたグリンフレーク。面影すらない。老人がひとり、暖をとっているだけ。まばらに咲く花が、より淋しさを引き立たせていた。
それを確認した後、メモリアリーフへと足を運ぶ。
メイドを追いかける主人のことをマリベルが散々に「ヘンタイ!ヘンタイ!」と言うものだから、つい笑ってしまった。
ギュイオンヌ修道院もまわり、そこではキーファにそそのかされるアルスが可愛かった。偽るのはよくないぜ、なんて。そんなオープンに生きてるのはお前くらいだよキーファ王子。
リンダとぺぺの墓も見た。これを全て理解するには、まだ先のストーリーを進めてからとなる。
現世に現れた場所に赴くのは初めてだったが、全てを知っているものだから、ただの観光のようだった。グリンフレークが廃れていたことも、アルスらにとっては初めて知る出来事。でも俺は知っていたから、へえ、やっぱり。それくらい。
俺が居るが故の変化らしいものもなくて、安堵するくらいで。退屈はしなかったが、とてもわくわくしたり、楽しいとは思えなかった。




20160316







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -