02


慣れない道で迷いながらもやっとのことで薄くもやのかかった神殿に辿り着いた。不思議なことにここに来るまで誰一人として顔を合わせなかったことに多少不安やらの感情を覚えたがもしも今、エスタード島しか存在していない時間軸なら面倒なことになりかねないので、良しとしておいた。
脳内にマップを思い浮かべ中へ入る穴への道を辿る。重い石の蓋を開き恐る恐る降りるとそこはゲーム通り、洞窟だった。薄暗い一本道を歩いて、七色の入り江手前の旅の扉を確認したらそこは期待通り扉が開いていた。未探索で閉まっているかもしれないというのも予測していたから、これも良い結果だと言える。

(確か旅の扉って気分悪くなるんだよな……やだなあ。でも帰るためには、仕方ないか)

目の前でぐるぐると不思議な色で渦を巻くそれをじっと見つめる。もしこれが夢であってくれるならここに足を踏み入れた瞬間目覚めてくれるだろう。本当にトリップしたのなら、自宅へ引き戻してくれるだろう。どうか、神殿内部へ行くことだけは避けたいですお願いします、お願いします。居るのかどうなのか神様に願いよ届けという気持ちで目を瞑り、身を委ねた。

「うぐぇ、気持ち悪ううっうぇっ」

予想以上の気持ち悪さに思わずえずく。目を開ける間もなく足元がふらつき、小さな段差のようなものに背中を打ちつけながら落ちていく。更に気持ち悪い。すぐにドンッっと行き止まりにぶち当たって止まる。全身の痛みと吐き気を堪えながら必死に考える。

(戻れた…のか?)

薄々感付いてはいたが、あまり現実を見たい気分ではなかった。目を開くとそこは薄暗い部屋の一角で、自室とは明らかに違う。実物を見た事は無いが、雰囲気があの神殿内部の青い祠と一致した。
あぁ、失敗したんだ。
本当に文字通り脳が必死に働く。これからどうやって生活していこうか?今日の寝床は?もう一生この世界で暮らす?あー、処理できない。まあどうにかなるだろう。そう思っていても意識とは反対にどんどん涙が溢れてくる。泣くだなんて、馬鹿らしい。
ふらふらになりながらも立ち上がり、扉を押し開けてそこから出た。広々としていて、記憶にある通り、今出てきた青以外の祠が建っていた。どうやら行き来ができるのはこの祠だけのようで、アルスやキーファらの旅はそう進んでいない事がわかる。だからといって自分の置かれた状況が変化するわけではなかったが、把握していないよりいいだろう。

(となれば石版はどこまで揃っているんだろう)

涙を拭った。まずは黄色だ。隣の部屋に進むとそこも広々としていて、ひとつの台座だけがうっすらと光を放っている。覗き込んでみれば、そこはウッドパルナへ通じるものだとわかった。

(地形だけでどこの地域かわかるってのもやりすぎかな……)

そう思いながらも、次は確か赤の台座、エンゴウだともう一度、祠の部屋を通り抜け反対側の部屋に足を運ぶ。
そこには石版が揃った台座はひとつもなかった。

(ってことはウッドパルナに居るのか、攻略済みってところか)

それだけでもかなり現状が把握できた。次はフィッシュベルかグランエスタードに赴きそれとなく情報を集めるべきか。いや、それをするのならウッドパルナが現在に出現してからでないとまずいかな。そんなことを思ううちに眠気に誘われ座り込み、そのまま赤の台座の部屋で眠りに落ちてしまった。






20140620








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