01


多分トリップした。


だって、そうとしか言い様がない。それもまだまだ憶測にすぎないが。


学校から帰宅後、俺はPSを起動させた。目的はドラゴンクエスト7をプレイするため。
確か4周目とかそれくらいだったと思う。今時古いあのカッシャン、とやる電源を入れてかなりボロボロのリモコンを握った。例の起動音を聞いたかどうかの辺りで思い出せる最新の記憶は途絶える。
そして気がつけば砂浜で寝てた。当たり前だが何が何だかわからなくて今現在も困っている。思い出せる記憶が夢だったとして……やっぱりそれはない。
目の前には夕日に染まる綺麗な海が広がっていて、きっとここはとても遠いところなのだろう。俺の住む場所の近くに海は無い。
辺りを見渡せばほとんど岩場。閉塞感がある程ではないが。背後に岩は無く砂が続いている。
というわけで多分ここはフィッシュベルかな。自分でも適当言ってるのは理解しているけどとりあえずそう検討をつけるくらいしか自分にできることはない。
もしかしたらオキナワの海辺でしたーとか、それも無理がありすぎるがそういうオチならまだなんとかなるが常に最悪の事態を想定して動くのが良いんじゃないかと平穏な人生を送ってきた俺が言います。
とにかく帰宅したい。帰宅方法がわからない。ここどこ。結局堂々巡りなので、とにかくアクションを起こさなければならない。これが本当にトリップなのなら、ご苦労なことだ。今気がついたが部屋に居たはずなのに靴が履かされてある。愛用のショートブーツだ。もうぼろぼろで、どうせなら新しいの欲しかった。

記憶に基づけば、きっとここはマップでいう主人公アルスの家よりも左側にある場所だろう。上へ歩けば村のはずれの洞窟があるはずだ。それを確認できたら確定、と制服についた砂をはらって歩き出した。




すぐにそれらしい洞穴を見つけた。まじかよ、と肩を落とすも中の構造を見るまではと中へ進んでいく。少しひんやりした空気で満たされたそこは薄暗かった。もう日が暮れかけていることから外からの光が無い。
ツボやタル、沢山確認できました。ついでにイメージしていたのと同じような水溜りも確認できました。思わずその場にへたり込む。
いよいよ実感が湧いてきて心臓が痛い。慣れない潮の香りがさらに不快感を増幅させる。
そういえば、時間軸はどこなのか。それすらも把握していないことに気付きどの事柄においても判断材料が少なすぎると痛感する。
幼少期にあたる時期なら。旅の中盤なら。オルゴデミーラ討伐後なら。
どれにしても時期によって自分のとるべき行動が大きく左右されることは間違いなかった。

「うーん、まいったなあ」

本当にお手上げ状態である。軽く考えていたがもしかしたらどえらい事に巻き込まれているのではないかと今になって思い始める。しかし、この世界には旅の扉という便利なシステムがあるのだ。時間軸がどうであれ運良く自宅に戻れるかもしれない、と。
そうとなれば早速一番近くにある謎の神殿に赴くべきだ。重い腰を上げ、洞窟を出た。





20140620








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