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その後、フォーリッシュで軽く食事を摂り本拠地へ向かう。その間、俺は脳内すっからかんで、暇で仕方なかった。ただついて歩くだけ。
だって、別に戦ったりしないんだもの。心構えとか、そういうものが根本から大きく違って、それが態度にも出ているらしい。先程マリベルに怒られた。呑気な顔してむかつく、って。なかなかに理不尽な叱責だが、反抗できるわけがなかった。全くもってその通りだから。


本拠地が見えてきた。本当に、そのままだよなあ。ゲームで幾度も訪れたそこと全く同じ。きっと俺が中に入れば迷わずマシンマスターのところまで辿り着けるだろう。絶対やらないけど。からくり兵の斧で、首たたっ切られておしまいだってことは自分がよくわかっている。

「レツ、あんた死なないようにしなさいよ」
「えっ?俺戦わないよ?ここで待ってる」
「ハアッ!?」

怒気を含んだ声に思わず耳を塞ぎたくなる。ああもうやだやだ。

「あんた、あたしたちのことバカにしてるでしょ!?だいたい、自分の好き勝手言っていい加減にしないと、承知しないわよ!」

好き勝手してるのは自分も大概だろうに。アルスやキーファはきっと同意してくれるだろうなあ。そこに、苦笑しながら、キーファが止めに入ってくる。

「まあ、その辺にしといたら……レツだって、ただ怠けてるわけじゃないんだし、な?」
「うん。俺、特訓してる」
「その特訓も成果がないと意味ないのよ!」

それは、仰る通りだ。でも、俺はまだここで死にたくはない。

「減らず口叩いて悪いけどさ、マリベルは俺の死体引きずって帰りたいの?」
「あんたの死体なんか置いて帰るわよ!」

まあ、本当にそうなった場合はそうしてくれるとありがたいんだけど。帰るところ、ないし。

「そもそも、なんかむかつくのよ。女みたいな顔とか」
「容姿を引き合いに出されちゃおしまいだよ。マリベルみたいなべっぴんさんにはかないっこないからね」
「レツ……!あんたどこまで嫌味な奴なの!?」

うわー、めっちゃ怒ってる。眉間の皺が半端じゃない。俺ってこんなに人怒らせるの上手だったっけか。

「これからって時に仲間割れしてどうする」

トラッドさんの冷静な一声で、マリベルはふん、とそっぽを向く。これから長く着いていくなら、こういう類の口喧嘩は絶えないだろう。

「とにかく俺、残ります。置いて帰らないでくださいね」



せっせと皆装備の点検にとりかかる等の用意をしている中、踏み込む前に一言、アルスにだけそっと耳打ちしておく。

「水には気を付けてね」

何のことですか。言いかけた途端、合図がかかる。ついてないよなあ。
いってらっしゃい、小声でそう呟いてみて、近くの木の傍に腰を下ろす。
アルス、キーファ、ガボ、トラッドさん、ゼボットさん、エリー。
これが本来の流れ。ここに俺は居ない。だから極力一つの起点には関わらない……今のところは。これから何時間待つことになるんだろうか。ここに来た目的は忍耐修行だと言われれば、納得せざるを得ない。待ちぼうけなんてしたことないし、あっても、早く授業終わんねえかなあとか、そういうのだし。

「それにしても、気持ちいいなあ」

さわさわと風に揺れる草。暖かい陽射し。どこか遠くの異国に来たみたいだ。あれ、ここ異国か。帰りたいなあ、帰りたい。意識がぼんやりしてきた。また待つことに飽きて眠ってしまうんだろうか。眠ることに飽きたら、次は何をしようかな。





20141029







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