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「アルスくん、おはやっほー」
「レツさん、おはようございます」

全員が起床して支度が整った頃を見計らって、城の外で待機するアルスらと合流する。まだ少し眠そうなアルスが、なんだか少しかわいい。って男にときめいてどうすんだよ俺。

「とりあえずこれから、フォーリッシュ行くんだよね?」
「はい。そうみたいです」

トラッドさんとゼボットさん、それにエリーも。この行く先、どんな会話するんだっけ。思い出せないや。それはそうと、ボス戦どうしよう。ああ、あれからまた、少しでも眠りにつけばよかった。そうしたら少しは考えも軽くなっただろうに。
起きていれば、不安な現実はかさを増して重くなっていくだけ。一度でも眠ってみればそれが少しは軽くなるはず、なんだけれど。

「レツさん、あの、いいですか?」
「え?あ、うん。何?」

アルスの方から声をかけてくるとはまあ珍しいこともあるんだな。でもこの先、ずっと一緒だとしたらそれくらいないと寂しいよなあ、なんて。

「勤め先は大丈夫なんですか?」
「あー、酒場ね。長期休暇もらったよ」

正直、店長に言い出すのにかなり自分の中で苦戦した。新参者でまだいっちょまえに酒も注げない女装ヤロウが長期でお休みくださいなんて言った日には即クビかとも考え、それも覚悟の上だった。しかし、その覚悟に反して店長の返しは軽かった。「別にいいけど。もしかして旅行?いつ帰ってくるか教えてくれよな」それだけ。いつ帰ってこられるかわからないと話してみても「もしかしてアルスらと行くのか!?……まあいいけど。じゃあ帰ってきたら仕事再開な」あっけらかんと休みがとれた。まあ、身分証明書もない俺が受かった店だから、これくらいルーズというか、緩くても、それはそうかと別段驚きはしないが、拍子抜けはした。

「結構、緩いんですね。宿に置いてあった衣類は?あれは、全部レツさんのものですよね?」
「あー、それねえ、アルスくんの家に送っておいた」
「えっ?」
「手紙も入れといたから、マーレさんがアルスくんの部屋に置いといてくれてると思うよー」

うわあ、表情、ドン引き。かわいいお顔そんなに歪めなくても。こんなにも顔に出す子だったっけ。いや、違うはず。あと、俺は悪いこと何もしてない。

「レツさん、すごい自分勝手ですね」
「っ、まあね……」

そんな単刀直入に言われたの、初めてなんだけど。眼が冷えてる。おお、怖いこと。でもどっち道、帰ったら言わなきゃいけない事だったし。

そんな立ち話をしていると、声が響いた。出発の合図だ。








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