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再度目が覚めた時にはキーファだけが起床していた。軽く挨拶を交わすだけで、他に何かすることがあるらしくふらりと部屋を出ていった。貴族の服とかもらいに行くのかな。自分は特にすることが思い当たらないので、本棚にあったかの有名なグラナリ語録を手にした。有名って言っても俺の中だけかもしれないけど。なかなか良いことを書いてあったようなそうでもないような。正直内容までは覚えていない。適当な頁を開くと、こう書かれていた。


死をおそれては いけない。
その先に 待つものがあるかも
しれないからだ。  −グラナリ語録


今の俺の心に響く言葉だったこと、正直驚いた。そして少しむっとした。タイミングが良すぎる。死ねと言われてるような気がしてならない。それを誘うのが天使なのか悪魔なのかまではわからないけれど。考えすぎもいいとこだ。
正直こちらの世界に来たくて来た訳じゃない。なのに無理やり排除されそうな気がして。首を突っ込んだのは自分だが。
死んで帰れる保障があるならすぐにでも死んでやりたいところなのだが、本当に天に召すような事があってはひとたまりもないので躊躇う気持ちはある。そもそも天国に行けるかどうかも不確定だ。


「どうしたんだ?そんな深刻そうな顔して」

声に驚いて顔を上げるとキーファがマリー姫を連れて部屋に戻ってきていた。こんな状況ではあるが、キーファが女たらしに見えるのはどうしてだろうか。ただの偏見か。

「これさあ、すげえ核心突いてきて怖い」
「あら、それはグラナリ語録ですね」
「姫様もこういうの読むんですか?」
「ええ。私のお気に入りですよ」

姫の身分でもこういう本読むんだなあ。教育の一環とかかな。

「レツ、読み終わったら貸してくれよ」
「もう読んだから、どうぞ」
「ありがとう」

マリー姫は部屋のタンスから貴族の服を出してきて、それをキーファに勧めている。ここにあったのか。それにしても似合うな。さすが王族と言いますか。マリー姫もベタ褒めで、なんだか感心する。戦闘もできてこういうのも似合うんだもんな。女装が似合う俺とはえらい違いだ。

「なかなか似合うね」
「そうか?ありがとう」

褒め言葉を口にしたつもりなのだが、あまりにも抑揚なく零れ落ちて少しまずったかな、と思うがキーファは特に気にする様子なく答える。

「俺、外の風当たってくる」
「ああ」

姫とキーファを部屋に残し外へ向かう。頃合い的にも、そろそろアルスも起きるだろう。からくり兵団拠点に赴くまで、少しでも特訓するつもりだ。





20150426








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