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フォーリッシュが堕ちた。その知らせを受けても自分はごく当たり前のようにしていた。うん、そうなんだって反応。軽い。だって、本当に当たり前の事だもの。知っていたのだから仕方ない。むしろそうならない方が驚く。
多少は動揺するべきだったかな。そうは言っても、そんな些細な事に気をまわす余裕なんて無かった。この先どうなるかな、堂々巡りの考えがぐるぐる。自分自身に案ずるより産むが易しという言葉を贈りたい。



「みなさんほら!こっち!」

外は戦場。ついにフォロッド城にもからくり兵が侵入してきた。今頃アルス、マリベル、キーファ、ガボは必死で戦っている頃だろう。そんな中、戦力として認められていない俺は避難誘導員まがいの事をしている。危機的状況に置かれパニックに陥りつつある人々をなだめ誘導する。この騒動の結末を知っているからこそ、ここまで冷静でいられるんだろう。そう考えるとなんだか申し訳ない気分になってきた。
誘導も一段落ついて、ぼうっとしていると小さな女の子が泣きついてくる。


「おにいちゃん、わたしたち、どうなるの?」

俺の脚にしがみついて、こわい、こわいよと言う。こんなシチュエーション、リアルにあるんだなあ。そんなことを考える自分は能天気にも程がある。

「大丈夫、外ではみんながんばってからくり兵をやっつけているんだ。絶対に負けない」

しゃがんで、目線を合わせて話す。小さい子と話す時は確かこうやるんだったかな。無意識に女の子の頭を撫でていた。

「絶対に?」
「うん。絶対。俺が保障する」
「ほんと?」
「ほんとだよ」


強くならなきゃ、いけないんだなあ。今言った絶対は、俺が誓ったわけじゃない。アルスらに事を丸投げしてそう言っているだけ。多分そうなるであろうから、言っているだけ。自らの行動を誓ったわけではない。それでも女の子はいくらか安心したのか、少しの笑顔を見せて母親らしき人の元に去っていった。


城内を簡単に確認したところで、見張り塔に登る。今以上にからくり兵が襲ってくる事は無さそうだ。入り口付近を見下ろすと、激闘が繰り広げられていた。加勢したい気持ちが無い訳ではないが、確実に死ぬ。誰もザオラルとか使えないだろうし。事の収束を待つしかないだろう。情けないやら何やら。見上げた空はやたらと色濃い。
こっちに来てから、迷ってばかりいる気がする。








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