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「で、結局この人は誰でこんなとこで何してんの?」
マリベルがずいずいとアルスに問いただす。困った顔をするアルスの代わりに、慌てるでも、緊張するでもなく返答する。
「先程も申しましたとおり、レツ・タカラというものです。皆さんの旅にお供いたしたく、こちらでお待ちしておりました」
なによ、さっきまでぐーすか寝てたくせに。同年代だからいきなりタメ口なのかそんな声が聞こえたが一応無視しておく。
「というわけなので、皆さんと同行させていただけないでしょうか」
アルス、キーファは困り顔、マリベルはあからさまに不機嫌そうな顔、ガボはさほど興味が無さそうな顔をしている。
「あの、そういうこと急に言われても……」
キーファが申し訳なさそうに言う。
「俺、アルスくんの友達なんですけどそれでもだめですか?」
自分で言っておいてなんだが、だめだろ。それだけじゃ不十分すぎる。もっとこう、自分を連れて行けばこんな利益があるよ、みたいな事を言えば良いのだろうけど残念ながらそういうものはひとつもない。あったとしても言えたもんじゃない。
「そういう事か。じゃあ、いいんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
とりあえず否定される間を与えず即お礼の言葉を口にする。けど普通そんな簡単に承認しちゃだめだと思う。好都合だから言わないけど。アルスの方を見やればキーファに抗議しようとしていたので笑顔を向けておいた。
「というわけで皆よろしくね」
「おう、よろしくな、レツ!」
ガボだけが、返事をする。他三人は突然の俺のタメ口に驚いているのか何なのか。マリベルなんかもう眉間に皺寄りたくりなんだが。アルスにしろマリベルにしろ、どうも嫌われるみたいだ。
「この先の世界、きついから覚悟した方がいいかもしれないね」
覚悟をするのは、俺の方だったかもしれない。
20140425
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