12


Arus side


「あと、言っておきたい事があるんだ。聞いてくれる?」

真剣そうな顔つきでそう言われても、さほど重要でない事なのだろうと思う。明らかに口元が半笑い状態だから。

「なんですか。」
「信じなくても、何でもいいんだけど聞いといて。この世界には、大方、俺の知る限り2つのルートが存在するんだ。8割方Aだと俺は読んでるけどどうもBにみられる傾向も出ていてね。で、ひとつ質問なんだけど」
「はい」
「ガボくんが話せるようになったのはいつの事?過去?それとも現代?」
「現代、ですけど」

そう、ガボはすっかり退化したデス・アミーゴに更に人間に近づけられてしまったのだ。本人はそれを喜ばしく思っているようでそれはそれで良いのではないかと思うが。

「そうか、ありがとう。でも、現代のエンゴウへ行く前にお城に泊まったね?」
「……どうしてそんなこと知ってるんですか」
「だってあの時、あのタイミングで酒場に来るとかそれしかないじゃん」
「はぁ……」

自分には理解できない、何か基準があるようだ。それを疑問に思うことも少し減ってきたような気がする。

「まあとにかくそういうこと。あともうひとつだけ、質問、いい?」
「……いいですよ」
「腕の痣……どっちにある?」
「え?」

そんなことまでも見透かされてるのか。確かに自分の身体には痣がある。

「あるでしょ。まさか無いとか言わないよね!?」
「あ、あぁ、右腕に……」
「えっ」

表情が一変して固まる。今までに見たこともないような素の表情。それをそのままに話す。

「言い間違いじゃないね……?」
「なんなら、見せますけど」
「いや、いい」

そう言って俯いた。考えているのか落胆しているのかは定かではないが、かなり想定外の返答をしてしまったのだと思う。しかしそれもすぐにいつもの調子に戻ってしまう。

「はぁ、ま、なんでもいいや。今日はありがとうね」









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