09


Arus side


石版に導かれ着いた先は、本当にオルフィーという町だった。驚いたというより、気味が悪かった。
それを、マリベルに言うでもキーファに言うでもなく、もやもやと心に溜めたまま事が進み、無事その町は救われた。伝説の白いオオカミの事も確か言及していたが、間違いなくガボのことだろう。

その後、レツさんの所へ顔を出すか考えた。彼の意図は全く読めない。こちらが向かう事を拒んでもきっと向こうから出向いてくるだろうけど。
行くのなら一人で行った方がいいのか、もしもこの先の事に関わるのなら、キーファ、マリベルやガボも連れて行った方が良いのか。わからなかった。

「なぁに考えてんのよアンタ。顔歪んでるわよ」

マリベルに額を小突かれ、はっと気付く。

「まさか、船酔い?……なわけないか」

続いてキーファにも言われる。ゆらゆらと波の影響を受けながらもしっかりと行くべき方向に進む小帆船は現代に出現したオルフィーに向かっていた。
苦笑しながら、はぐらかす。

「もし、この先に関わる事なら黙ってるなんて許さないわよ」
「そうだぞ、何かあるなら言えよ」

やはり、言うべきなのだろうか。レツさんの存在を。伝えたところでどこまで信じてもらえるかも怪しいが。

「いや、なんでもないよ。もし何かあったら言うよ」
「なら、いいんだけど」

つんとした表情でも、自分のことを心配してくれているのだ。仲間が居る事に、感謝した。

「ありがとう」
「何よ、感謝される事なんてした覚えはないんですけど」

舵をとるキーファ、海図を眺めるマリベル、自分の横でぐーぐーと寝息をたてて眠るガボ。当たり前のようで感謝すべき事なんだ。

「そろそろ起きなよ、もうすぐ着くよ」










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