あきぞらのはて。

-11-

「はー。…急に寒くなったね、ユリア…」
「そうね…」

季節は廻り、秋から冬になっていた。
相変わらず、一族の仲間は見つからないまま。

こうしている間にどれだけの同胞が、と考えては――それを、やめる。
最近は、エリオットさんまでも少し、考え込むようになった。

これだけ捜しても見つからないという事は、多分本当に、もうこの辺りにはもう居ないのだろう。
しかし、1年経たなければこの器からは、出ることができない。

族長も、俺が何とかする、と言ったものの、今のところその手段は見つかっていない。
…最近は、ただ集まって話をするだけになっていた。

「…おう。…相変わらずか?」
「…、はい。」

「…………、そっか。」
「どうにかして、別の場所へ行けたら良いのですけどね。」

「んー………」
族長はどうも、心ここに在らず、という様子だった。

――長い、沈黙。
その沈黙を破ったのは、――ロサだった。

「…ねえ、ユリア。」
「なあに?」

「あのね。…私、考えたんだけど。――ユリアが、鳥に成れればいいなって。」
「――…え? …貴女、何言ってるの?」

「…俺も考えてみたんだけど。多分それが、一番早い。………他の手段、探してはみたんだけどな。」
「うん。…あのねユリア、聞いて。…私にはやっぱり、ヒトの生を奪っていくのは、つらいことだと思うの。だから私ね、」
「ロサ、貴女は…つまり、私が貴女に…ティラに、成り変われと言うのですか。」

「そうよ。…そうしたらユリアも鳥の姿になれるようになるし、新しい器を捜さなくても、鳥になって飛んで行って、他の仲間を…」
「そんな…折角同胞を見つけたと思っていたのに、そんな、ことを…」

「大丈夫よ。だって、私はずっとユリアと一緒に居られるんだもの。だから私は大丈夫よ。…それに、私には多分、次の器を選べないから。」
「そんな、……」
「………やっぱりそうするしか、ないと思うんだ。」

「長…」
「うん。そうだよね? そうすれば、一人でも多くの仲間を助けられるかもしれない。…それなら私は、手伝うよ?」
「…俺はいつだって鳥になれるけど、ユリアはまだだからさ。…でもロサの助けを得れば、早い話、わざわざヒトのいるところに紛れ込まなくてもよくなる。」

「……一人でも多くの仲間を救うのでは、なかったのですか…」
「ユリア、落ち着いて考えて。…私はユリアになってしまうけど、…翼を思い出す仲間が一人でも二人でも、増えるかもしれないのよ。」

「…………………」
「私は誰かの人生を奪うなんてできない。でも、ユリアが私を器にしてくれれば、ユリアと同じ景色を見ていられる。…私はそれで、構わないわ。」
「………ユリアは、どうする?」

「………………。」
「ゆっくり考えて、良いんだからな。」

ロサの顔を見る。
――彼女は、にっこりと笑った。

「――わかりました。…ロサ、本当にそれで、いいのね?」
「…いいよ。ユリアが鳥になって、私も一緒に空に還れるのだもの。」

「………よし、……決まりだな。…ロサ、楽しかったぜ。」
「こちらこそ。…ま、これからもユリアと一緒に居るんだけどね。」

流石にエリオットさんも、長い息を吐いた。
しかしそれでも、彼は笑う。

「またユリアが突っ走りそうになった時は、よろしくな。」
「うん、止めるよ。…いつもみたいにね。」

“元気出してね、ユリア。…大丈夫よ、これからはずっと、一緒だから。”――

――そうして私は、真の翼を得た。

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