あきぞらのはて。

-10-

昼休み。
――集合場所は相変わらず、屋上。

「よお。…どうだ?」
リオンさんはいつも早い。私達が一通り校内を廻ってくるよりも早く、屋上に着いている。

「…特に変わった様子は、みられませんでした。」
「空見上げてるひと、やっぱりなかなか見つからないわ。」

「ふーん、そっか。…ここに居たのは、ロサだけなのかもしんねぇな。」
「………長。」

「…そんな思い詰めた顔しなくたって、まだ時間はたっぷりあるんだし、そう急ぐ必要もねーよ。」
「それはそうですが…」

「ユリアはさ。…仲間を失いたくねーから、一刻でも早く、…一人でも多く助けようと、焦っちまうんだよな。」
「………、はい。」

「うーん、だからさ。…いくら焦ったって、どこ捜したって、居ねー時は居ねーって、前も言ったろ?」
「しかし、――」

「確かに。捜さなきゃ見つけるのは難しいけど、そんな根詰めて捜してたら、いざって時に何も出来ねーかも知んねーぞ?」
「……………。」

「……せめてさ。学校っていう限られた場所にいなきゃなんない、今くらいは…何つーか、ゆっくりしても良いんじゃねーかと、俺は思う訳。」
――だってこんだけ捜しても、見つかんねーんだし。

「…、そうかも、知れませんね。」
「…へへ。だろ?」
「空が好きな私たち同士、ゆーっくり空見て、のーんびりすれば良いのよ。」

――確かに。
折角晴れ渡った空が、頭上には拡がっているのだから。

「私も、――空を見上げることを、忘れていましたね。」
「…、おう。」
「はー。…やーっとユリア、笑ったね。」

「え?」
「そーだな。…ここ最近、笑ったとこ見てなかった。」
「うん。…よっぽど、頑張ってたんだね。」

――そうかもしれない。

空を見上げることを忘れた夢空族は、翼を忘れた鳥の如く堕ちてゆくのだと、聞いた。

夢空族として認められたのだから、空に気付いていないわけではない。
しかし、空を見上げる心を失くした者は、――脆い。

その予兆に気付けるのは、長であるエリオットさん、ただ一人なのだ。
一人でも一族の者が“減少”してしまわないよう、私と行動を共にしていたのだろうか。

「なあユリア。…お前まで居なくなっちまうのかと思ったよ。」
「…それは、」

「礼は良いから。――うん、やっぱ俺が居て、良かったよ。…ユリアは目下の奴の意見なんて、聞かねーだろうし。」
「ああ、確かにそうっぽいですよねー。…言えば言うほど、反対の方に走って行っちゃいそう。」

「だよなー。…ロサ、口挟まないでくれて、ありがとな。」
「私、その場の空気は読む方なんで。」

――人の目に映る自分というのには、こうも気付かないものなのか。
いつも、言われてから気付く。

「あー。…あんまり見上げてっと、眠くなってくるなー」
「…ていうか、折角和んだ所だけどそろそろチャイム、鳴るっぽいよ?」

「ありゃー。…しゃーねえな、そろそろ向かうか。」
「…。そうですね。」

「放課後はまぁ。…そろそろ学校ばっかりじゃなくて、周りも見てみるか。」
「そうですね。」

「ま、気楽ーに行こうぜ。」
「うんうん。焦っても仕方ないし!」
「…、そうね。」

――やはり。
そう急がずとも、なるようになってしまうのだろう。

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