あの月はきのうもあそこにあった



あの月はきのうもあそこにあった
おとといもその前も何億年前にもあそこにあった
月はずっと同じ色をしている

瞳を曇らせず街を歩くあなたが愛しい
その隣りでわたしは
愛してもらえなかった人の残像が消えずに
薄暗い道を頭にひろげて
それはなみだでてらてら濡れていて
たまに白く光る

たのしそうに歩くひとの群れをかわす
風の匂いで思い出すnostalgieに
月だけがわたしを見ていた
「おいしいものを食べに行こうか」
あなたはそう言って、夜は少しずつ流れる
少しずつ流れさせる





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