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挫折を乗り越えて


※ペイン参戦設定



暁のペインが里を襲撃してから一夜が明けた。



「はぁ…」



ボクは他のペインと応戦し撃退するものの、負傷してしまう。ちなみに肝心な所で九尾の暴走を抑えられなかった。それでも何とかナルトは自我を取り戻し、勝利を納めた。一人の英雄が誕生した瞬間。

各地で激しい戦闘、一般市民が避難する暇もなく巻き込まれていた。破壊される建物、崩れ落ちる瓦礫、それを素早く木遁で防ぐ。ありがとう、という言葉が聞こえたがそれよりも早く逃げて欲しかった。なんせ範囲が広いから、膨大なチャクラを使うし隙をつかれ攻撃されちゃ元も子もない。



「最後の最後でチャクラ使いすぎたか…」



その結果ボクは今、入院している。

半壊している病室、そのベッドの上から外を眺める。英雄が誕生したとしても、里の被害は壊滅的だった。



「…あ、あのお加減は如何ですか?」

「ん?あぁ、怪我の具合はそこまで酷くないよ。って…私服…?あれ、君は一般人?」



声が掛かりその方向を向くと、てっきり病院に勤める看護士だと思っていたら、ナース姿でもなく、医療忍者でもない女性がいた。

もしかして人手不足だから、一般人でさえ駆り出されるとか?



「えっと、私…普段はアカデミーの事務とかやってるんです。でも…」

「…医療忍術?」 



ボクの些細な疑問に丁寧に答えてくれたかと思うと、腕に温かいものを感じた。そこはまだ少しだけ血が滲んでいた場所だった。
彼女は腕に手をかざし、チャクラを込めて傷を癒やしてくれた。



「…はい、少しだけ医療忍術をかじってるので…お役に立てるかと思い…」

「そうなんだ、ボクはヤマト。君は?」

「あ、名無しさんと言います」

「名無しさん、治療してくれてありがとう」

「…っ…」

「えっ…?ど、どうしたの、ボク何か気に障る事でも…」

「い、いえ、違います…ちょっとお礼になれてなくて…」



名無しさんと答えた彼女は、いきなり半泣きになった。

聞けば、医療忍者としての素質があったにも関わらず血がダメだという理由で忍としての路を諦めたとか。



「今回の戦いで…血を流す人がたくさんいて、気が狂いそうになりました。怖くて、身体の震えが止まらなくて…」

「…今も血が怖いの?」

「怖くないといえば、嘘になります…ほら」

「…本当だ。だったらどうしてここに…」



その手は震えていて顔色は青白く、お世辞にも良いとは言えない状態。



「怖かった…自分も、人がドンドンと倒れていく様を見るのも…。でも里の忍は…皆を守る為に戦っているのに…。ヤマトさんだって残り少ないチャクラで皆を守ってくれた、助けてくれた」



そこで気付く、無我夢中で気付かなかったが、どうやらボクが助けた中に彼女もいたんだろう。



「だから…私も逃げちゃダメだって、私には治癒する力がある…だったら少しでも苦しんでる人達を助けなきゃって…っ」

「…うん。だからこの病院にいるんだね」

「はい…で、でも震えが」

「大丈夫だよ…」


震える彼女の手を優しく両手で包む。

彼女は一度挫折した、それは誰にだってある話。才能があっても、障害が立ちふさがる。
それを乗り越えてこそ、初めて才能が開花し自分に自信がもてるようになるんだ。



「君は逃げなかった、一歩踏み出した。だから、ここにいるんだろ?自信を持って」

「っ…」

「たくさん人を、助けたんだろう?」

「や、ヤマトさんっっ」

「わっ…」

「ううぅ…!!」



大粒の涙を流して、ボクに抱きつく。

そんな彼女の服を見れば、至る所に赤いシミがあった。推測するに、治療の際に着いた血だろう。ボクの所に来る前に、たくさんの人を助けていた証拠だ。

きっと、今まで一人で耐えていたんだね。



「名無しさん、君はもう立派な医療忍者だ。志だって揺るぎないし、怪我をした人を治療した、助けた。きっと君に感謝している、ボクもそうだよ。改めて言うね?ありがとう」

「…ヤマトさん…っ」



震えが止まった。
もう、大丈夫。

彼女はこれからボクらと同じ路を歩んでいくだろう。その力で前線に立ちつつ、たくさんの人を治療していく。



「…いつか…一緒にマンセル組めたらいいね」

「…!!ヤマトさんっ、私…きっと忍としての感覚は鈍っているので…当分はまともな任務につけないですが…いつか必ず追いつきます、だからその時はマンセル組んで下さいっ…!」

「あぁ、もちろん。楽しみにしてるよ」



可愛い後輩が出来て頬が弛む。
そんな彼女をボクは見守り続け、待ち続けるだろう。

でもただの可愛い後輩じゃなくて、違う立場になるのはもう少し先のお話。



fin




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