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ありのままの気持ちを


今まで至って普通の恋をしてきた、でも報われない物ばかりで。
それはきっと、ボクの性格が関係していたんだ。



「お、来たなテンゾウ」

「急に呼び出して何の用ですか、先輩?それに今はヤマトです」



顔を合わす度に行うやり取りに、呆れた様子を見せるカカシ先輩。片目しか見えてないのにそれが伝わってくる。


「お前、相変わらず堅苦しいね。そんなんだから彼女出来ても長続きせずに振られるんだよ」

「うっ」



痛いところを突かれるとは、まさにこの事。
図星のボクを見て、先輩は笑う。



「ま、ヤマトをイジメるのは楽しいけどここまでにして…今日は次の任務の顔合わせをしようと思ってね」

「あぁ…」



そういえば、数日前に火影様からそんな事を言われてた。Sランクの任務で、内容が危険だから異例の上忍3人で行うと。



「オレとお前、で、もう一人が彼女」

「彼女って……女性?」

「そ、名無しさんって言うんだよ」



目の前に現れたのは、黒髪がいやに印象的な女性。
先輩が紹介をし、軽く頭を下げてこちらを見る…



いや睨む…?


「何です、女だったら不服とでも?」

「えっ、いや…そんなわけじゃ…!」

「動揺する所が怪しいですけど?私、女だからって舐められるの大嫌い…カカシさん、この任務上手く行く気がしません」

「まぁまぁ、そう言わずに」



女性だから不服とかではなく、てっきり男が来ると思っていた矢先の出来事だったので、こういった態度を取ってしまった。
慌てて弁解をするが、時すでに遅かれし…どうやら、触れてはいけない部分に触れてしまったようだ。


先輩が宥めるように、彼女に声を掛ける。



「こいつね、真面目だからトコトン自分の中で物事考えちゃうのよ。でも決して女性だからとか、そういう考えはしない奴だから…そこはオレが保証する。だから機嫌直して?」

「…カカシさんがそう言うなら…。っていうか別に機嫌悪くないです」

「そ?じゃあついでに任務の詳しい説明もするよー」



さすが先輩、相変わらず口が上手くて物事を見事に鎮めてくれた。そして間髪入れずに任務の打ち合わせが始まった。

先輩が話をする中、チラッと彼女の方を見る。
その視線に気付いたのが此方を見た。



「……フンっ」

「あはは…」

 
前途多難。

もちろん悪気があってした事じゃなかったけど、彼女の気を悪くしたのは確かだ。謝る事も出来なかったので、ひとまず心の中でごめんと呟く。 
こんなギクシャクした雰囲気で任務に行くと、支障が出るかも知れない。
打ち合わせが終わったら、ちゃんと謝罪しよう。そう決めて、渡された書類に目を通し内容を確認する。



「大体解った?出発は明日の早朝ね、遅刻しないよーに!じゃ、オレは他に任務入ってるから」



ヒラヒラと手を振り、ドロンっとその場から消える先輩。


遅刻なんて、どの口が言うんだか…



「…えっと名無しさんさん」

「…何です、テンゾウさん」

「あ、名前だけどボクはヤマトだよ」

「カカシさんはさっきテンゾウと言ってましたが」

「あぁ、でも今はヤマトなんだ、それはね」

「…めんどくさっ」

「えっ…」



テンゾウはあくまで暗部時のコードネーム、正規部隊になった今の名前はヤマト。
それを説明しようと思ったら、彼女の口から冷たい言葉が放たれる。



「テンゾウだろうが、ヤマトだろうが、どうでもいい…貴方はそれを言いたくて、私を引き留めたんですか?」

「や、でも物事には順序ってものが…」

「へぇ、人の気分を害して物事の順序?」

「ぅ……」



それを言われると何も言い返せない。
というか、こういったやり取りを女性とした事がなくて少したじろいでしまった。



「私が欲しい言葉は、テンゾウでもヤマトでもない」



強い凛とした瞳がボクを捉えた。

あぁ、そうだった…
ボクが彼女に伝えるのは、自分の名前なんかじゃなくてただ一言。



「…ごめん」

「……」

「危険な任務で、異例の上忍3人のマンセルと聞いたからてっきり男性が来ると思ってて…そしたら君が現れたから驚いて」

「そもそも、そこから間違ってる」

「えっ」

「異例の任務に女性が抜擢されるのはおかしいとでも?」

「…そうだね、ボクの先入観だった」



歳はそう変わらないが、出会ったばっかりの人に説教されてるなんて。

何やってるんだか…
でも彼女の言葉は正論だ。



「分かってくれたなら、いいです」

「あぁ、ボクの考えが浅はかだったよ…本当にごめん」



ふぅっと息を吐く音が聞こえ、ピリピリした空気が和らいだと思ったら、それを軽く崩された。



「あれですね、ヤマトさんってバカみたいに真面目で…彼女と長続きしないタイプでしょ」

「なっ…。で、でもね!頭の中で色々と策を練って、シミュレーションをすると格段に任務成功率は上るんだよ?」

「うわぁ、何それ…!つまり任務と同じに考えてるって事?…有り得ない…」

「……!」



そうか、そうだったのか。
ボクが恋仲になった人と長続きしないのはこれが原因だったんだ。
全てにおいて、慎重に策を練り行動するこの性格。計算されたそんな物、いらなかったんだね。

ストレートに気持ちや行動を示し、君が好きだと囁いて抱き締めて、愛を込めれば良かったんだね。



「…名無しさんさん」

「何です」

「ありがとう…」

「罵ったつもりだったのに、お礼の言葉が来るとは…変な人ですね」

「はは、キツい言葉だね…ついでに、もう一言言っていいかな」

「言うならタダですし、どうぞ?」 

「名無しさんさん、貴女に惚れました」

「……言うならタダとは言いましたが…まさか」

「貴女を、好きでいていいですか?」

「…勝手にして下さい…。とりあえず明日の任務うつつ抜かして失敗とかしたらキレますから」

「はは、肝に銘じておくよ」



ボクが惚れた人は、今まで周りにいなかったタイプ。物事をストレートに言い、プライドが高い女性。
言うまでもなく今日、初めて出会った。
その上、初対面で彼女の気分を害して、更に罵られ、これは最悪のパターン。

いつもなら、どう挽回してだとか、どうしたら好意を持ってくれるだとか考えるけど…
自分の欠点を知り、受け入れた今のボクには、そんな物もう邪魔なだけ。


今はただ、素直な気持ちを伝えたかった。
そこから先はまた後で考えればいいさ。



fin



***
ヘタレキャラにするのは、私の常套手段です(笑)
暗部時のコードネームの説明は普通しないと思いますが、そこは大目に見て下さいませw




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