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03

ひょんな事から一緒に暮らす事になったボク達、どうなるかと思ったが想像していたよりもそれは心地良いもので。


「おはよう、名無しさん」
「ヤマトさん、おはようございます!朝ご飯出来てますよ」
「頂くよ、いつもありがとう。…ごめんね、毎日任務で、ろくに話し相手にもなってやれなくて」


当初、不安要素だった深紅の瞳をした女性。
数ヶ月、一緒に生活を共にしたがそんな気配は微塵もなかった。

やはりあれはボクの見間違い、だろうか? 
もしくは秘めたる幻術の力を持っていて、知らず知らずの内にそれに掛かってしまったとか?


性格だって、全然違う。
彼女は穏やかで真面目、そしてウブで、内気。身体が少しハダケたくらいで、顔を真っ赤にして抗議するような子。
もしかしたら、それは今までひっそりと暮らし極力人と関わる事を避けた結果なのかもしれない。
周りの環境さえ整っていたら怯える事なく日々を過ごし、その美しい容姿に加えて優しい性格、きっとみんなの人気者になっていただろう。

話がズレたけど、まぁ何もないのに越したことはない。ボクの見間違いって事で、それは納めておこう。


「そんな事ないです、こうやって一緒に住まわしてくれるだけで…私は幸せ」
「…そっか。でも昼間は暇だろう?別に出掛けてもいいんだよ」
「…一人で、外はまだ」


そこで、しまったと気付く。
彼女はボク以外の人に対して、免疫がなかったと。他にあるなら、あとは綱手様くらいだ。

誰か紹介した方がいいかな?
信頼出来る人はたくさんいるけど、もしそうするなら慎重にいかないと。
そこで浮かぶは、やはりあの人。


「…今度、ボクの尊敬する先輩を紹介してもいい?」
「ヤマトさんが尊敬する先輩ですか…?」
「うん、見た目は変だけど一流の忍でホントすごい人なんだ。はたけカカシって言うんだけど」
「カカシさん…。ヤマトさんがそういうなら、会ってみたい…かな」
「決まりだね、近い内に紹介するよ。でもまず次の休みにどこか行こう?二人なら、大丈夫だろう?それと、なにか欲しいものがあるなら遠慮なく言ってね、買ってくるから」


少しずつ、慣れていけばいい。
焦る必要はないのだから。


「じゃ、じゃあ…本が欲しい。料理本」
「料理本?」
「ヤマトさんが、美味しいって言ってくれるような料理作りたいです…!」
「……今でも十分、美味しいよ 」


あぁ、この子は…
なんていじらしいのか。

聞けば彼女の歳は、ボクより二つ下。
童顔ってわけでもないのに、幼く見えるのはきっと愛嬌のせい。
透き通る白い肌と、真っ黒な艶のある髪。お人形みたいに綺麗なのに、話せばくったない笑顔が溢れる。

このギャップの破壊力は、綱手様やサクラの怪力より凄まじい。こんな彼女を知ってるのはボクだけで、少しの優越感に浸る。


「っと、そろそろ行かなきゃ。ご飯ありがとう、帰りは少し遅くなるかも知れないから先に寝ててね」
「はい、いってらっしゃい」


毎日が充実していた。任務をこなして家に帰ると、暖かく迎えてくれる存在。
今まで身体の繋がりはあっても、大切な者は作らなかった。それはお互い、いつ死ぬか分からないから。忍なんかしてると尚更そうだ、悲しいじゃないか、一人残されるなんて。
だから家庭を持ってる忍が信じられなかった。でも今ならその気持ちは分かるし、尊敬し羨ましくも感じた。


もちろんボクらは恋人でも何でもないけど、それでも信頼は重ね、絆は出来たはず。


名無しさんが笑顔で迎えてくれる為にも、頑張ろう。





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