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01

今回のSランク任務、それは抜け忍を始末する事だった。

情報に基づき、潜伏先へと向かう。
すると視界に入るはターゲットの抜け忍と、複数の男。彼らは奴の仲間になるのだろうか、それならば始末すべき存在。
少しだけ様子を窺っていると、その内また一人男が何やら大きな荷物を持ってやってきた。
まずいな、これ以上人数が増えるとなると厄介だ。

そろそろ動くか?
そう思った矢先、信じられないものが見えた。


「人…?」


麻布のようなものから出てきたのは人、それも女性だ。遠目でも分かる、透き通るような白い肌に真っ黒で艶のある黒髪。顔は見えなくとも純粋に美しいと思う。

ここで一つの推測が浮かんだ、彼女は攫われて闇ルートで売買されるところだったのではないかと。人を売買するなんて以ての外、抜け忍とも繋がっているようなので始末しても問題はないだろう。もしここで見逃せば、彼女のような不幸な者達がまた生まれてしまう。だったらここで終止符をうっておこう。

そうと決まれば、ここからはボクの舞台。
気配を消して、まずターゲットの抜け忍に手を掛け、すぐさま周りの男共を始末する。


***


「…気が付いた?」
「っ……」


意識を取り戻したのか、ボクを見る女性。
遠目から見た時は美しく大人な女性と思ったが、近くで見ると幼さを感じた。


「もう大丈夫だよ」


こちらを見るその瞳には恐怖の感情が纏っていた。それを気遣い怖がらせないように極力優しい音色で声を掛ける。
それでもよほど酷い扱いをされていたのか、彼女の怯えは止まらず、近くにあったクナイを掴みボクの腕に突き刺した。


「…落ち着いて、大丈夫だから…。もう君を苦しめる者はいない」
「…っ…」
「あぁ…泣かないで」  


自分の仕出かした事に対しての震えか、ガタガタと身体を揺らし泣き出す。
どうも女性が泣く姿は苦手だ、そっと涙を拭ってやる。


「…それ、手…私が…っ」
「これくらいどうって事ないよ、むしろこれくらいで君の気が晴れたなら安いもんさ…なんてね?」
「て、手当します…」


少し落ち着いたのたか、わざわざ自分の服の裾を破り傷口を止血してくれた。
その際に彼女の手に血が付着。


「ありがとう…えっと、そう言えば君の名前まだ聞いてなかったね」
「私は名無しさんです…っ」
「…ん?」
「っ…はぁ…ぅ」
「!」


急に俯き、表情が一切窺えなくなった。
すると同時に荒い息が聞こえる。

もしや、何か薬でも飲まされたのか?
あの手の輩がするには、よくあるパターン。
顔をのぞき込み、そこで気付く。
さっきまで普通の黒色の瞳だったものが、深紅色に染まっているという事に。


「なっ…」


口元を見れば仄かに赤いものが。
唇を噛んだのか、それともさっき手に付着した血を舐めたのか?


「はぁっ、くっ、ん…誰…貴方…?」
「ボクは…いや悪いけど、任務中だから言えない」


つい名前を口走りそうになったが、今のボクは面をし暗部として動いているので、容易に素性をばらすわけにはいかない。


「っ、…そう…まぁどうでもいいわ…貴方が悪いだけっ…」
「ボクが…悪い?」
「私を助けて…目覚めさせて…その上…強いなんてっ!」
「…!」


先程までの怯えていた女性は何処へいったのか。

目の前にいたのは妖艶で、それはそれは美しい女。ボクを見つめるその深紅の瞳に釘付けになる。
まるで金縛りにあったかように、身体は動かなくなって簡単に押し倒された。
そのまま馬乗りをされ、顔を近づけて来る。


「とても…美味しそうな…」
「なっ…」


剥き出しの二の腕をペロッと舐められ、細い手が面に伸びる。

外す気だ…

さすがに任務中に顔をさらすわけにはいかない。
意識を集中させて金縛りから逃れると、馬乗りになっていた女性の首筋に手刀をあてる。


「あっ…っ…」


気絶し、ドサッと力なく倒れる身体を受け止める。手加減はしたつもりだが、チャクラを練り込んだそれは、普通のものより破壊力はあり負担は大きい。
きっと、当分は目覚めないだろう。


「ふぅ…あぁ、ボクは一般人になんて事を…始末書じゃ済まないぞ…」


自分で言っておきながら、考えはそこで止まる。

本当にただの一般人だったのかと。
確かに華奢で、どう見ても戦えるような身体でもなく、なによりその容姿はとても美しくて、人身売買の商品としては納得がいく。

あぁ、商品とか失礼だな…
きっと今まで怖い思いをたくさんしてきたはず。このまま放っておけるわけもなくて。

任務は終了だ。
さて、腕の中にいる女性の事…なんて報告ようか?


そんな事を考えなら里に向けて帰るのだった。





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