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「#エロ」のBL小説を読む
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16

ボクと君の関係。
それは一番心を許せる友人だろう。つい先日、それが明確になった。
もちろん、ボクにとってはそうじゃない。
ボクは名無しさんを愛している、だけどその気持ちを言葉にした事はない。
いや、正確にはしてはいけない。何故なら彼女は新たな一歩を踏み出したばかりだから。
必死で覚醒した自身をコントロールしようと日々奮闘しているのに、変に異性を意識させて混乱させるわけにはいかない。
 
実際はボクを異性として意識しても、自分には相応しくないだとか、冗談はよして下さいとか、そんな具合に流されるんだろう。
 
何ていうか…男として情けないこと、この上ない。
 
 
「いくよ、名無しさん」
「は、はいっ。お願いしますヤマトさん!」
 
 
もう見慣れた光景だ、二人だけの秘密の修行。
 
ボクが流した血を見ると身体を軽く前のめりにし、次の瞬間には覚醒した彼女…
深紅の瞳の、妖艶な名無しさんが現れる。
 
雰囲気だけでなく体系も変わっていないかと心底思う。グラマラスというか、とにかくエロイ。そのまま抱きついてくるから、本当に堪ったものじゃない。
 
我慢強い方と自覚しているが、いつかプツっと切れそうな自分もいそうで怖い…
 
 
「!」
「ふふ、何を考えていたのかしら…隙だらけね?」
 
 
目を閉じて色々葛藤していると、甘ったるい声がすぐ近くで聞こえた。慌てて目を開けて、状況を把握する。
彼女、名無しさんはボクの腕にピッタリと寄り添い、耳元に唇を寄せていた。
まるで麻薬。クラクラになり、思考回路がろくに働かない。脳内が悲鳴を上げ…否、悦んでいる。細い指先で首筋をなぞられ、ゾクゾクとしたものが背筋を駆け巡る。
 
いつもと違う行動だ。
いつもなら、指先から流れた血を舐め吟味し、そのまま首筋を噛まれ彼女の好きなように血を吸われるのに。
 
も、もちろん、その間にコミュニケーションをとる為にたくさん話しかけているよ?
この光景を見られていたら、説得力なんて皆無だろうけど…
 
首筋を撫でていた指先がゆっくりと下降し、鎖骨を撫でられる。普段触られることのない箇所に、ますますゾクゾクとしたもの…快感が訪れる。
 
 
「っ…」
「色っぽい、声…興奮しちゃう…」
「もっ…!!」
 
 
もう、限界。
それは言葉にはならなかった。
 
興奮だって?
そんなもの、こっちはずっとしているさ。
でもこれはコントロールする為の修行だ、邪な気持ちなんて持ち合わせちゃいけない。
なのに、彼女は敢えて煽る…
 
鎖骨を撫でていた手が胸元を弄り、腰あたりに触れた瞬間。ボクはとうとう名無しさんを押し倒していた。
 
白い素肌に深紅の瞳、散らばる長い黒髪。
 
ゴクリと喉が唸る。
 
 
「……名無しさん」
「……」
 
 
勢いのまま押し倒してしまったが、彼女は特に抵抗もなく、ただ微笑むだけ。
それに対して少しの悪寒…綺麗な笑顔のはずなのに、何処か怖いものがある。お陰で先ほどまでの邪な気持ちと興奮は一気に冷めた。
 
 
「ご、ごめ…今、退け…!!」
「遅い」
 
 
急いで離れようとしたが、それよりも早く華奢な名無しさんの腕によって引かれ密着。
身体が触れる事は今までにだって何度もあるが、今回は体勢が違う。男性が優位の被さる形で、そこに彼女の柔らかい四肢が当たっているのだから。
 
 
「む、胸…当たってるって…!」
「可愛い反応…」
 
 
ボクの反応を楽しんでいるのか、さらに力を込めて抱きついてくる。
さすがにこれ以上はヤバイ。
健全な成人男子だ、嫌でも反応はする。
 
 
「こうなったら…っ!?」
「…はぁいサービス、終了…いただきます」
 
 
どうにかして無理やり気絶でもさせようかと思った矢先、ちゅっと軽いリップ音と生暖かい感触…
そして、チックっとした鈍い痛み。
 
 
「な…名無しさん…君…今までの…」
「ん、今日もおいし…」
 
 
そこでやっと気づく。
今ままでの行動は全て、彼女の甘い甘い罠…
 
焦らして、煽って、ボクの雄の部分を晒しださせたかったんだろう。
 
最後は狙い定めた箇所にキスをし、舌で舐めあげて牙を突き刺す。
そう、いつものように首筋から血を吸われて終了だ。
 

もう…彼女の掌の上で転がされすぎだろ。
 
 
猛烈な快感と共に、意識は途切れる…
毎度の事だが記憶の片隅で、元に戻った名無しさんはどんな反応をするんだろうと。
 
あぁ、とりあえず頑張れボク。





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