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15

「ぷはぁ…ほんと、よかったあぁ!!」
「えっと、ヤマトさん…?」
 
 
テーブルで向かい合わせに座り、缶ビールを口にする。
 
首を傾げながら、こちらをきょとんとした顔で見る名無しさん。
無意識のその行動、もう本当に可愛いんだから。
 
 
「先輩はねっ、いつも飄々として、それでもって良いとこ取りの常習犯!どれだけ振り回されたか…」
「…あの、もしかして酔ってる?」
「酔ってなんかないよっ!っていうか、そうやって誤魔化してさ…ボクの話つまらないの!?」
「ち、違うよっ!」
「じゃあ…話もっと聞いてくれる?」
「う、うん…でもその前にお水飲んでスッキリしよう?」
「ん…うん?」
「はい…落ち着いたら話してね」
 
 
酔っているつもりはなかったけど、呂律が上手く回らなかったので彼女の言う通り水を飲んで頭をクリアにさせる。
 
少しだけ顔を机に伏せて、ボクはゆっくりと話を切り出した。

 
「……あの人は本当に心の底から里を、皆を大切に思っているから…君を殺そうとしたんだ…」
「…うん、なんとなくだけど…それは分かった」
 
 
それは今日の出来事。

名無しさんの秘密がバレて、カカシ先輩に問いただされた。先輩はこの里に脅威の手が伸びるなら躊躇する事なく相手を始末をする。それが女、子供であっても。
もちろん彼女も例外じゃなっかた。
 
ボクでさえ萎縮するほどの殺気。
本気で、名無しさんを殺そうとしていたんだ。
 
 
「ごめんよ…そんな目にあわせて。ボクは、情けない…」
「どうして、ヤマトさんがそう思うの…?」
「…君が殺されるのが怖かった、君を失いたくないって強く思ったんだ。怖いのは名無しさんの方だったのに」
「…怖くなかったって言ったら嘘になるけど…でもちゃんとカカシさん解ってくれたし…」
 
 
最終的に先輩が名無しさんを理解してくれて、物事は無事に事なきを得た。
 
ボクだって一流の忍。
何を優先すべきなんて事は解っている。
忍は時として非情ならなければいけない、それは十分承知。
 
だけどいざ彼女が標的にされた途端、ボクの決心が鈍ったんだ。
 
 
「もし先輩が君に手を掛けようとしたら…ボクは全てを投げ捨ててでも守ろうとした」
「…っ、ヤマトさんのばかっ!!!」
「えっ…!?」
 
 
普段の彼女からは想像できない程の大きな声。見ると、名無しさんの瞳には大粒の涙が溜まっていた。
 
そして、ボクの胸をポカポカと叩く。
 
 
「私の為とか…そんなの、いらない!ヤマトさんが私を庇って、怪我して…もし死んじゃったりとかしたらっ、私…また一人になるよぉ…」
「……」
「誰かの犠牲で生きていられるほど、私は強くないし価値もない!…ヤマトさんがいない世界なんてツライよ…っ!」
「…ごめん」
 
 
胸を叩いていた手を優しく掴み、そのまま抱き締めた。少し乱れた彼女の呼吸がボクの心音をかき乱す。
 
ボクは君の本心を理解出来ていなかったと、そこで思い知った。
 
今まで君の何を見て一緒に過ごしていたのか…やはり情けない。
だけど、はじめて君の言葉で、君のボクに対する想いが聞けた。
 
嬉しかった。
 
 
「こんなこと、言える立場じゃないって解ってる…でも、ヤマトさんは失いたくないのっ」
「…ありがとう、でもそれはボクだって同じだよ」
 
 
呼吸が落ち着いたことを見計らって、抱き締めるのを止めた。
ずっと抱き締めていたかったけど、名無しさんはきっとそれを拒む。もちろん嫌だからという意味ではなく、恥ずかしいから。
いつもなら、そこでからかったりするけど今はそういう雰囲気じゃない。
 
 
「ぁ…」
「ん?」
「…その、もう少しだけ…いい?」
「いいって…抱き締めるって事?」
「あっ、でも…やっぱりいい!今の忘れ…っきゃ!」
「名無しさん」
「っ…や、マトさん」
 
 
まさかの、彼女からのおねだり。
 
ボクはぎゅうっと、痛くない程度に抱き締めた。すでに落ち着いた呼吸のかわりに、バクバクと唸る君の鼓動が心地よい。

 
「約束する」
「約束…?」
「うん、最後まで守るって」
「最後…って、私が死ぬ時って事?」
「そうだよ、ずっと。それなら犠牲でもなんでもないだろ?」
「そ、そうだけど!でも私の為にずっとなんて勿体無いから却下!」
「勿体無いって…」
 
 
かなりいいムードになっているはずなのに、この色気のない会話。そして、きっと言葉の意味を理解していないだろう名無しさん。
 
勿体無いで片付けられるとはね…
 
 
「…でも、私を守ってくれるってことは…側にいなきゃダメだよね?」
「そりゃね、離れて守れるなら苦労はしないし。それがどうしたの?」
「そっか…そうだよね、うん。だったらヤマトさんに大切な人が出来るまで側にいて下さい!」
「えっと…?」
 
 
彼女の意図がイマイチ掴めずに困惑。
 
 
「私を守る為に側にいるなら、必ず帰ってきてくれるって事でしょ…?」
「…あぁ、そうだよ。どんな任務でも必ず君の傍に帰ってくる、君を守る為に」
「うんっ、期間限定でね!」
「…分かった」
 
 
そういう事か。
彼女らしい、ボクを思っての考え方。
頬が緩み、心が温まる。
 
でも期間限定と大切な人が出来たら、っていうのは納得してない。だってボクの大切な人は、他の誰でもない君。それはこの先も変わる事がないから、最後までだよ。
そして、側じゃなくて傍。
 
まぁ色々言っても反論されるだけだから、黙っておくけどね。
 
 
これは一番心を許せる友人といったところかな?
恋愛感情じゃない純粋な想いがくすぐったい、いつかその想いが変わりますように。





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