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12

名無しさんの正体が吸血鬼の末裔だと判明したからといって、二人の関係は変わらない。
ボクらは互いに秘密を共有している、むしろグッと絆が深まったと思う。

 
「しかし…本当にギャップ激しいなぁ」
「えっ?」
「ううん、こっちの話」


隣で本を読んでいる名無しさんを見つめて呟く。

血を吸う時の彼女は、とにかく色っぽくて妖艶。そんな雰囲気も嫌いじゃないけど心臓には悪い。

普段はとってもウブな女性だから尚更、この前だって… 



***



その日は蒸し暑かった。
任務が早く終わり帰宅して、そのままシャワーを浴び汗と汚れを洗い流す。
風呂上がりの火照った身体、アンダーシャツを着る気分にはなれなかったのでズボンだけ履いてリビングに移動すると、強烈な叫び声が放たれる。


「きゃぁぁぁ!!!や、やや、ヤマトさん!!そんな格好しないで!!」
「まったく…何を慌ててるんだい。たかが上半身裸じゃないか、下はちゃんと履いてるんだよ?」
「そ、そういう問題じゃなくて…!あぁ、は、早く服を!」


慌てふためく姿を見て、いたずら心が擽る。

気になる女の子にちょっかいを出したりする思春期の男の子って、こんな感じなんだろうか。


「だってボクさ、お風呂上がりだし暑いんだもん」
「そ、それでも…!」


微笑みながら、座っている名無しさんの横へ移動した。その顔は恥ずかしさからか、ほんのり紅くて涙さえ滲んでいる。

あぁ、可愛い…

でも、そこで止めておけば良かった。
何故なら…運悪く、任務帰りのカカシ先輩が叫び声に反応して何事かと室内を覗き込んできたから。


「さっきの悲鳴はどうした…!って…」


片目が見開き、先輩が固まる。

ボクは上半身裸、すぐ傍には蹲り顔を真っ赤にして涙目の名無しさん。

これは明らか襲ってる最中というか、今から襲いますというか…慌てて離れるが、時すでに遅し。


「テンゾウ…お前っ!!!」
「せ、先輩!これは誤解で…!!」
「問答無用、恥を知れ!!」
「うわわわっーーー!!」


額当てをずらし写輪眼が表れると、そのまま意識は途切れた。
正確には写輪眼による瞳術で悪夢を見せられ意識を失ったといったところ。

雷切が来なかっただけマシなんだろうか…
   



 


一体どれくらい悪夢に魘されていたのか?
ふと冷たい感覚に意識が覚醒、その正体は濡れたタオル。


「あ、起きた?」
「ん…はっ、せ、先輩は!?な、何もされてない、名無しさん!?」
「えっと…多分?…それにカカシさんならさっき帰ったよ、面白い人だね」
「お、面白い…?」
「うん、ヤマトさんの事と色々教えてもらっちゃった」


どんな事を吹き込まれ…じゃない、教えてもらったのかとてつもなく気になるところだが、二人の間に何もないようで安心した。

名無しさんの容姿は誰もが目を惹くから、先輩だって論外じゃないと思っていたから。   

が、次の質問はタブーだった。


「そ、そう…。でも、何かぎこちないけど大丈夫…?」
「っ…………ごめんなさい、覚醒しちゃった…」
「えぇ!!?」


まさかの。

確かに任務帰りなら傷を負ってもおかしくないし、何よりあの人は強いから名無しさんが覚醒しても不思議じゃない。

でも詳しく聞けば、逃げるように帰ったとか。先輩が逃げるなんて想像つかない。
ただ、勘は鋭い人だから…近々絡まれるかも知れない。


「ば、れた…かな?」
「恐らくね…でも先輩なら大丈夫だよ。悪い人に見えなかったろ?」
「うん…なら良いんだけど…」
「例え何かあっても、ボクが必ず守るから…安心して」
「ありがとう…。あのねヤマトさん、里に住む人達も皆ああいう感じなのかな?そうなら…会ってみたいかも…」
「…そっか」


この際、先輩の事は忘れよう。
今は彼女が先だ。

極力人を避けていた名無しさんが、他人に興味を示したのは大いなる進歩。だけど同時に、自分だけの名無しさんじゃなくなる。
もちろんそういう関係ではないけど、どこか寂しくも感じた。


「私…ヤマトさんに一番最初に会えて良かった。ヤマトさんは私にとても優しくしてくれて、そんなヤマトさんが大好きな里の人達なら…仲良くなれるって思い始めたの」
「…っ」


なんて可愛い事を言うのか。
やはり、ボクは彼女が…

堪らなく愛しくなって、ゆっくりと腕を回した。


「あ、それより!これからはちゃんと服着て下さいっ!!」


腕が触れる寸前に立ち上がり自室に戻る名無しさん。
見事に空振りしたボクの腕と気持ち。
 

……うん、肝に銘じておくよ。



***



「ふふふ…」
「へ、変なヤマトさんがいる…」


何でもいいさ、君が傍にいて、ボクを一番に想ってくれる事実がそこにあるなら。





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