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11

彼女の名前は名無しさん。
訳あってボクと一緒に住んでいる。
でも二人は恋人でも何でもなく、敢えていうなら秘密を共有した仲だろうか。

名無しさんは吸血鬼の末裔。
血は薄れても潜在的能力が眠っていて、とある出来事がキッカケで覚醒した。覚醒した彼女は、吸血鬼の性分である血を欲する。
そして驚くべき事は、彼女に舐められた傷は治癒するというわけで、そこに目をつけたのが五代目火影様。医療忍者として育て上げ、前線に立ってもらおうと。

もちろんボクはそれを否定した。
潜在的な能力と共に、戦える力もあるそうだが、彼女が忍としてやっていけるなんて到底考えも付かなかった。どう見ても名無しさんは一般人で守るべき存在なのだから。


でも彼女は言った。


『自分を鍛えて、自分で自分を守れるくらいにはなりたい。そしていつか…人を、里を守れるような忍になりたい!』


そこで初めて気付く、彼女を守るべき存在と決めつけたのは自分のエゴだったんだと。
自ら路を切り開き歩もうとしているのに、それを邪魔する所だった。


「ボクってば、名無しさんの可能性をつぶす所だったのかもね……」
「私の可能性をつぶす?」
「ん、こっちの話し」
「?」


キョトンとこちらを見つめる名無しさんの瞳は黒。覚醒し、血を求める時の彼女は深紅の瞳。性格はガラッと変わるけど、名無しさんには違いなくて。

ただ、愛おしいと思う。

まだあまり公にしていない君の秘密を、ボクは知っている。
そして火影様にも話していない秘密だってある。


「さて、修行しよっか?」
「あ、うん、今日も…吸い過ぎたらごめんね…」
「はは」


指を噛み、血を流す。
それに反応して、深紅の瞳となり覚醒する名無しさん。

覚醒した彼女はただ、己が欲望の為に血を欲するだけで意志疎通もそこまで出来ない。
何がいけないって、欲するのは強い男の血のみで弱い男や、女子供は受け付けやしない。本人曰く、不味いらしい。
それをコントロールするのが、名無しさんの修行。
言葉に語弊はあるが、隔たりなく舐めて治癒してもらわなきゃね?

さぁ、そろそろ来るぞ…


「ストップ…」
「やん、ここまで舐めさせといて…お預けとかっ」
「お預けとかじゃなくてね、君はこれから医療忍者としてその素晴らしい力を発揮していかなきゃならないんだよ」
「ヤマトぉ…私が嫌い?」
「うっ、だから…そうじゃなくて……っあ!」


顎にまであるアンダーを素早く下ろされ、牙じゃなく、少しだけ尖った八重歯が首元に刺さる。 
途端に襲い来る刺激。
これが、火影様にさえ秘密にしている事。

名無しさんはある程度血を舐めると、異様に興奮し、自ら八重歯を刺し血を吸う。
もちろん吸われたからといって、死ぬわけでも吸血鬼になるわけでもない。
ただ甘くて、強烈な刺激が全身を襲う。
それはまさに、性交渉の時のような感覚。


「はぁっ…名無しさん」
「ん、美味し…」
「あぁ、もうっ…」


そこから果てる。

間違っても、アレがイったとかそういうのじゃないからね!
意識が遠のく意味で、果てるって事だから。


「ごちそうさま…ヤマト」


ペロッと舌で唇を舐め、彼女は笑う。


これがボクと名無しさんの秘密。

そうして数時間後に目を覚まして、一番に目に入るのは顔を茹で蛸のように真っ赤して土下座する名無しさん…

覚醒中であろうが、彼女自身には変わりないので記憶はちゃんと覚えているらしい。
そのやり取りが、実は少し楽しみっていうのも秘密。





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