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09

「ただいま」


今日の任務を終えて、帰宅。
おかえりと、部屋の奥から声が聞こえる。


「今日は早いんだね」
「最近ずっと遅かったし、そろそろ名無しさんと一緒にご飯食べたいなって思って頑張って早く切り上げてきたんだ」
「…同じだ。私もヤマトさんと一緒にご飯食べたいって思ってた。あ、でもまだご飯出来てないの…」
「なら今日はボクが作るよ」
「でも、疲れてるのに」
「疲れてないから大丈夫、とりあえず着替えてくるね」


埃っぽいベストとアンダーを脱いで、部屋着に着替える。

冷蔵庫に何があるのかな。
それか、一緒に買い物から行くのもありかな?

久々に二人で過ごせる時間に、顔が弛むのは仕方ない。



***



「わぁ、美味しそう!」
「よし、じゃあ冷めない内に食べよう」


冷蔵庫を開けると食材はたくさんあったので、あまり待たすのも悪いと思いさっとお手軽な物を作る。

話が途切れる事なく、楽しい時間が過ぎた。


「ヤマトさん、後は私が片付けておくから先にお風呂どうぞ」
「じゃあ、お言葉に甘えて」


キッチンで洗い物をする名無しさんの後ろ姿を見ながら風呂場へ向かう。

服を脱ぎ捨て、少し熱めのシャワーを頭から掛ける。


「ふぅ」


今日1日の汚れを落として身体と脳がスッキリとした状態で湯船につかり、とある事を考える。


「そろそろ付き合ってやらなきゃね…」


それは名無しさんとの修行。

焦らないでゆっくり行こうと話は決まったが、そこから任務が立て続けに入り纏まった時間が取れなくて先延ばしになってしまった。
彼女の事だから何も言わないが、きっとモヤモヤしてるハズだろう。力になりたいのは嘘じゃないから、ちゃんとしなきゃいけない。


「お風呂上がったよ、名無しさんもどうぞ」
「あ、うん」
「それと…お風呂上がったら、修行しようか?」
「…お願いしますっ…!」


待ち望んでいた言葉だったのだろう。
驚きつつも、嬉しそうな表情になるのが証拠。
そして彼女はお風呂に行った。



***



「よ、よろしくお願いします!」
「そ、そうかしこらなくても…」


いつもなら時間を掛けて入るお風呂も、慌てて短い時間で切り上げる姿に少し苦笑。
まだ完全に乾ききっていない髪を一つにまとめて、ベッドに腰掛けたボクの目の前で正座している名無しさん。
成人した男女が一つ屋根の下、その上男の寝室にいる。そんな状態、少しだけ邪な感情が生まれるのは男の性というのか。


しっかりしろ、ボク。
これから行うのはナニではなく、ただの修行だ。


「とりあえず君もベッドに座ったら?」
「彼女でもないのに、そんな事出来ない…!」
「…なら、ボクも下に座るよ」


【なら、ボクの彼女になってよ】
って言葉を言っても、受け止めないだろうね。

ボクは彼女に好意を寄せている。
まだ守りたいという気持ちの方が強いけど、きっとすぐに変わる。

今、君は自分の路を切り開く事に必死だ。
それを邪魔はしたくない。
だから、その言葉や気持ちはまだ取っておくよ。


「さ、開始だ」
「……っ…」


真正面に座り、指を噛んで血を滴りさせる。
赤い血が、指先を伝う。

一瞬、顔を伏せて現れるのは深紅の瞳の彼女。


「…名無しさん、覚醒した君が舐めた傷は治るんだろ?それにチャクラも練れるようになったと聞く」
「……はぁっ…」
「結論的に言うと君には医療忍者として…っ!!」


大人しく話を聞いているかと思ったら、いきなり飛びついて来て指を口に含む。


「はぁっ…んん」
「こ、こら…名無しさん、話を…っ」


舐めるだけならまだしも、口に含みながら吸い上げるのは反則だ。
その上、上目使いで見上げられて…

わざと男を煽っているようにしか思えない。

たかが指先といえばそうだが、色気が半端なくて。愛撫されているように感じ、恐ろしい事にだんだんとその気になってしまう。


名無しさんの修行に付き合いつつ、ボクの忍耐力も鍛える修行になりそうだ。


「ん…濃厚…」
「……」


ピチャピチャと舐めとる音とその台詞。


わざとか!


待て、冷静になれ。
今日が初日だ、最初から意志疎通が出来たら苦労はしない。
こういったコントロールは根気が必要。
再度、声を掛ける。


「君…人と話すの好きじゃないの…?」
「んー…」


意思疎通が出来ないと言っても、こちらの言葉や会話は理解しているはずだ。
つまりは己の意思を曲げないというか、自分の都合の良いものしか受け入れないというか…

とりあえず難な性格には違いない。


「こうやって一々質問されたりするのが、めんどくさい?」
「…血」
「血?」
「血、もっとくれたら…少しは答えてあげる」
「…」


指先から唇を離す彼女。
その傷口はすっかり塞ぎ、血は止まっていた。

さて、どうするか。

彼女の望む通り、もっと血を与えて色々答えてもらう?
それとも今日はもうここで切り上げて次に回すか…


「…ねぇ」
「うーん…」
「……隙、見せちゃダメよ…?ふふ、頂きます…」
「ぇ…?…っ!!」


やってしまった…!

ボクがあーだ、こーだと考えを纏めていると、彼女はいきなり抱き付いてきて、顎元のアンダーを素早く引き下げ首元を晒す。
少し尖った八重歯が刺さる感覚と甘い刺激が襲う。


「力…抜いて…痛くないでしょ、吸いにくい…んん、ちゅっ…」
「う…あっ…」


痛いとか、痛くないとかの問題じゃない。
血を吸いながら時折舌先で、刺し傷をなぞったりされ、ゾクゾクとしたものが背中を駆け巡る。

完全に彼女のペース。


「さ、さっき言った事は…守ってもらうよ…っ」
「…んー?」
「血を、もっと与えたら…答えてくれるんだろっ…」
「…じゃあ、意識があったら…ね?」
「…なっ…!」


さっきよりも強く抱き付かれ、深く歯を刺されて血を吸われたのが分かった。
血が身体から抜けていく変わりに、訪れる甘美な刺激。

本当に質が悪い。
こんな状態で意識なんて、保ってられるわけないよ。


「ご馳走様…また、吸わせてね?…おやすみ」
「……ぁ…」


満足したのか、身体から離れていく。
今まであった体温がなくなり、少し寂しい感じにもなる。そして彼女が名無しさんに戻る前に頬へ軽くキスをされた。



意識が途切れる直前に見たのは、前と違い泣き顔じゃなくて…真っ赤になって、慌てふためく顔だった。

キスした事が恥ずかしいのかな?
もう、可愛い過ぎだろ。
起きたら、からかってやろう。


修行、初日。
まぁ、こんなものだろう。

明日以降も頑張ろう名無しさん、そしてボク!





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