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03


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名無しさんは木ノ葉の中心街より少し離れた村の中で生まれた。

母は中心街で常に働いていた為、幼き頃の記憶はあったとしても其処に愛なんて物はなかっただろう。そんな幼い名無しさんを世話してくれていたのは、いつだって近所の人達。偶に帰ってくる母…ある日を境に二度と帰ってこなくなった。その時、名無しさんは5歳。なにも分からずに父に問う。



「母様は何故帰ってこなくなったの?」



純粋に問いかけただけだった。
小さき子供の素朴な疑問、特に深い意味はなかったが、それが仇となり父の気に障ってしまったのか名無しさんは虐待をされるようになった。

最初はいなくなった母への当て付けだった。己の気の済むまで暴力を振るう。だが成長するにつれ母に似ていく美しい容姿に性を吐き出そうと、我が子を襲いだした。
 


「と、父様…やっ…やだっ…!!!!」



訳も分からず押し倒される。手足を押さえつけられ、ゴツい手が身体を厭らしく這う。必死に抵抗をし一瞬の隙を付いて逃げ出した。酒が身体に染み渡っている父が追いつくはずもなかったが、無我夢中、名無しさんは足を休める事なく走り続ける。

そして、木ノ葉の里の中心街へと逃れた。



「はぁ…はあ、っ…っ!!」



意味が分からなかった。
怖くて、気持ち悪い、気持ち悪い。

自分が何故あんな事される…?
力がないから?弱いから?

女だから?



「…強くなりたい…っ」



自分の身は自分で守れるくらいに。
もう二度と、泣き寝入りはしない。

名無しさんは火影に謁見を申し出て、一言。



「忍に…強い忍びになりたい!!」



名無しさんは肩先に触れるぐらいだった髪を短く切り落とした。成長途中だった身体はまだ女≠ノ見られなかったが、あんな惨めな思いはしたくないと男≠ニして生きる道を選んだ。
誰にも負けないように、舐められないようにと決意を込めて。

そこから、彼女…彼の、物語は始まった。

時は瞬く間に過ぎ去りメキメキと実力を示し今の暗部としての地位を確立させる。流石にその頃になると誤魔化しきれなくった胸などをどうにかすべく、男装ではなくチャクラを使い変化の術にて常に男として過ごしていた。

昔は心身共に強くなって己を守りたいだけだった。けれど今はどうなんだろうか、彼に同じ風に問い掛けて其の答えが出るかといえば否。名無しさんは悟る、この力があれば復讐だって出来ると。しかし決して忍としての誇りを忘れたわけではない、此れは里を守る為の力でもあると───揺れ動く交差された心。



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「おにーさん、良いオトコねぇ」

「……」



偶然か、其れとも必然なのか。
色々な思いが交差し始めていた時に出会ったのは…母だった。まさか今、此処で出会うなんて。体が震える。此れはなんの震えなんだろう?

しかし、問題はそんな事よりも…私と、娘と気付いていない。つまり…色男に食いつき一夜限りの関係を求めてきた、と。



「醜いね…反吐が出る」

「へっ…!!?」



自分がなにか憑りつかれたのが分かった。素早く相手の背後を取り、手刀を首筋に当てて意識を奪う。

さて、どうしようか…



「そうだ…父に会わせよう」



あの男の事だ。ちょっとやそっとの事でくたばる奴でもあるまい、今ものうのうと生きているだろう。昔に己を捨てた女との再会…アル中によりまともな思考回路など存在しない男だ、どんな扱いを受けるか…考えただけでも笑いが込み上げる。

後から分かった話だが、母は有名な花魁だった。そんな女に一目惚れをし無理やり孕ました結果、産まれたのが私。勿論、母は父に対し本気じゃなくて堕ろすつもりだった。だが産まなきゃ殺すと脅す父、よくある話。そして収入面の事を考え父は母に花魁を辞める事は強制しなかった。子供さえいれば自分の手元に置いておけると安直な考えが其処にはあったのだろう。脅され、仕方なしに適度に父の元へ帰り金を渡す日々。だが酒に溺れ時に手を上げる行動に我慢の限界がきたのか、母は二度と帰ってくる事はなかった。

母が帰らなくなった原因は父。其れが真実、今となってはどうでもいい事。
時は過ぎ去り、有名な花魁はすたびれて今に至る訳である。



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「目、覚めた?」

「…!あ、アンタさっきの…!誰よ…なにが目的!?」

「あのさ、オレが分からないの?」

「当たり前でしょ…!アンタみたいな男、初めて会ったわよ!!」

「男…初めて…我が子も分からないとか。本当に救いようがないな」

「はぁ?我が子…?」

「…解」



埒が開かないし、これ以上こいつと会話をしても不愉快になるだけ。変化の術を解き本来の姿に戻る。基本的に顔は変わらないが丸みの帯びた女性特有のラインが現れる。



「…女…ぇ…まさか…名無しさん?」

「ふん、さすがに名前は覚えていたようだな?そうさ…あんたがオレ達を捨て、そのお陰でオレはあの男に性的虐待までされそうになった!!お前が憎い!…っ、は…はぁ…まぁ、その話は後だ。とりあえず今から男のあの元へ連れて行く」

「あの、男…!?」

「お前の元旦那さ、どうなるだろね、あいつ喜ぶかな?殴ってくるかな?…襲われるかな?ははは、いい気味だ!!」

「ほ、解きなさい!!」

「解くわけないだろ…これは復讐だ、醜いアンタらから産まれた醜い私、オレのな!!はは!!」

「っ……」



もちろん全てが終わった後は…



「二人とも殺す」



嗚呼、闇へと…深い混沌へと堕ちていく。





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